データの分析とその後の行動変容提案が価値

一般にショッピングモールや百貨店では「販売スペース」から対価を得る。一方、b8taの場合には1商品に割り当てられる「区画」だけでなく、来店した顧客に関するデータが提供されるのが特徴だ。

出品者がb8taから得る顧客関連データには、定量的なデータと定性的データがある。

このうち定量データには、店内に設置しているAI(人工知能)カメラで自動判別する年齢層と性別という属性データと、来店者の店内の動きを映像でとらえ可視化した動線データがある。区画の前を通ることで発生する「インプレッション」は、2020年にオープンした2店合計で1150万件を超える。このほか「ディスカバリー」と呼ぶ製品の前で5秒以上立ち止まった回数もカウントし、出品企業にフィードバックする。

 来店者を認識・追尾して店内でどのように動いたのか可視化する
来店者を認識・追尾して店内でどのように動いたのか可視化する

もう1つの定性データとは、b8taの店舗スタッフ「b8taテスター」が顧客とのやり取りを通じて得られる情報である。例えば「本体色として白が欲しい」「持ち運ぶには重すぎる」といった顧客の生の声だ。

b8taテスターを通じて得られる情報は多様だ。ある化粧品ブランドは、自社製品に興味を持つ人の服装を欲しい、情報取得のメディアを知りたいといったリクエストをしたことで所望の情報を得ることができた。

プロモーション手法の見極めに役立つ情報が得られることもある。どのタッチポイントが最も送客に効いているのか来店者に聞いてみると、意外とラジオが多いといった定性的な情報を企業側にフィードバックできることもあったという。

思いがけない情報が得られることもある。フィナンシェを出品した企業は、もともと女性向けの商品としてプロモーションしていたものの、予想外に男性が買っていくことが多いことに気が付いた。聞いてみると、男性が仕事帰りにお土産として家族に買って帰るという行動パターンが得られたのだという。多くの出品企業がこうした定性データのフィードバックに価値があることに気が付いた。

定性データの取得において重要な役割を果たすのがb8taテスターである。彼らは企業から直接トレーニングを受けることで、製品の仕様や魅力を正しく伝えるだけでなく、製品の「ストーリー」の語り部でもある。なぜこの製品が生まれたのか、社会的な意義がどのようなものかまで解説することができる。

b8taテスターと並んで重要な役割を果たしているのが、「パートナー・サクセスチーム」だ。これまで出品した企業によると、店頭で得られたデータをどのように読み取るべきかが重要という。b8taはこの分析作業を特定の人のスキルに頼るのではなく、組織的に解決しようとしている。取得したデータをもとに、次にどういう打ち手を打つべきなのか、専任チームを組織化して検討している。このチームがいることで、企業が抱えている課題をどのようにすれば解決できるかを均質にアドバイスできるというわけである。

コロナで実店舗の役割が再定義

過去においてリアル店舗は「売り上げに直結する場」だったが、コロナ禍を経て多くの流通企業がリアル店舗のあり方が今後どうなるのかを考えるようになっている。

新型コロナウイルスが広がる以前からb8taでは「ネットが生活に浸透したことで消費者の購買パターンが変わってきた」と考えてきたという。ネットが普及する前、消費者は「近場」で「認知しているもの」を買っていた。認知方法としてはテレビや紙媒体といったマスメディアに限定されていた。マスメディアに出稿できるのは大企業が主体となる。

ネットが普及した今では、消費する「場所」も「時間」も選ばないようになった。認知度が低い新興企業でも、ネットを使えば限られたセグメントにアピールできる。企業にとっては消費者とのタッチポイントはますます重要になり、限られたタッチポイントで顧客のニーズを拾えるかの巧拙が問われる。

b8taでは、リアル店舗が顧客との重要なタッチポイントと位置付け、製品の開発あるいは経営の意思決定に必要な情報を顧客から得る場と定義している。出品者はb8taから得られる定量・定性データおよびそれに基づいた今後の活動指針を期待する。b8taとしては、今後より一層ゲームやエンタメなどの無形商材を扱うようにし、出品企業に対して提供できるデータの「解像度」を上げたいとしている。