「ゼノアック」の愛称で親しまれる日本全薬工業の設立は1946年。動物用医薬品の製造販売メーカーとして産声をあげ、現在では、動物用医薬品やバイオテクノロジー製品などの研究開発から製造、販売を手がけ、国内動物薬業界のリーディングカンパニーとして事業を展開している。

同社は大塚商会を通じてMicrosoft365を導入。レガシーシステムと併用しながら、Teamsやクラウドサービスなどの活用などを進めてきた。一方、現行アプリでカバーしきれない部分は「とりあえずExcelで対応」し、急場をしのいでいるのが実情だった。

そこで、当時ICTマネジメント部長を務めていた米澤俊弥氏は、ローコード開発に着目。Microsoft365ユーザーに無償で提供されるPowerAppsを活用してアプリを開発し、現場主導での業務改善を試みている。

PowerApps版「チェック&レビュー」のアプリ画面
PowerApps版「チェック&レビュー」のアプリ画面

米澤氏はこう語る。「本社が東京にない当社では、プログラミングの専門家を自社で確保することは今まで以上に難しくなります。今後は、ローコード開発ツールをうまく活用して、現場の人間がデジタルトランスフォーメーションに取り組めるようにしないと、会社自体が生き残れなくなると考えたわけです」

日本全薬工業 経営企画部 シニアDXマネージャー 米澤俊弥氏
日本全薬工業
経営企画部
シニアDXマネージャー
米澤俊弥氏

レガシー化したシステムをローコード開発でスマートに

PowerAppsの本格活用に向けて、まずは社内で広く使われているExcel版の「チェック&レビュー」シートの改善を検討することにした。「チェック&レビュー」シートとは、同社が運用する業務日報で、部下はその日の予定や実績などを報告し、上司がコメントして意見交換を行うもの。組織の全階層を対象としたコミュニケーションツールとして、同社が2016年に日本経営品質賞受賞において「社員重視」の点で高く評価された理由の1つとなった。

だが、導入から10年以上が過ぎ、ツール自体がレガシー化。米澤氏は、2017年のICTマネジメント部着任早々、ある役員から「このツールをもう少しスマートにできないか」と相談を受けた。

Excel版は「1人1ファイル」が原則であり、10人の部下がいれば、「ファイルを開いてレビューコメントを入力し、ファイルを保存」という一連の作業を10回繰り返さなければならない。「管理職以上は上層になればなるほど、部下の人数が増え、見るべきファイルも増える。こうなるとレビューするのもひと苦労で、多大な負荷がかかっているのが実情でした」と、経営企画部長・伊藤雄一氏は語る。

日本全薬工業 経営企画部長 伊藤雄一氏
日本全薬工業
経営企画部長
伊藤雄一氏

そこで、ICTマネジメント部ではPowerApps版「チェック&レビュー」アプリの開発に着手。2018年に第1版、翌19年に改良版が完成した。2020年には経営企画部でもPowerApps版の利用を開始。その使い勝手のよさを実感した伊藤氏が、アプリの全社展開を社長に提案するとすぐさま賛同が得られ、社長から役員、部署長、チームリーダー、一般社員へと、トップダウンで利用者の裾野は瞬く間に広がっていった。