高速バスに乗り、前の座席の後背部にあるQRコードをスマートフォンで読み取ると、道路の混雑や天候などによって変動する目的地への到着予測時刻が表示される。そんなサービスが評判だ。迎えに来てくれる人にバスが着く時間を知らせることができるし、新幹線に乗り継ぐ時はその予約にも役立つ。

正確な到着時刻をリアルタイムに予測し、高速バスの利便性向上を目指しているのは、みちのりホールディングスのグループ企業である会津乗合自動車(福島県会津若松市)だ。導入路線は会津若松-郡山-いわき線、会津若松-仙台線の2つ。位置情報プラットフォームを展開する蘭HERE Technologiesが開発した位置情報技術を活用している。

(出所:みちのりホールディングス)
(出所:みちのりホールディングス)

「バス交通は世の中から必要とされる存在」

路線(ルート)を定めて決まった時間に定期的に運行する乗合バス(路線バスとも言う。高速バス含む)の需要は、高度経済成長期の真っ只中の1968年度(昭和43年度)がピークだった。そのときの年間輸送人員は、実に約101億4400万人。その後マイカーの普及により減少の一途をたどり、2019年度(令和元年度)は42億5800万人となっている(国土交通省「乗合バス事業の現状について」ほか)。

かつてバス事業が盛んだった時代に「満員バスで通学した」と話す松本順代表取締役グループCEO(撮影:長坂 邦宏)
かつてバス事業が盛んだった時代に「満員バスで通学した」と話す松本順代表取締役グループCEO
(撮影:長坂 邦宏)

みちのりホールディングスの代表取締役グループCEOの松本順氏は、乗合バス事業の置かれた状況について次のように話す。

「新型コロナウイルスの感染拡大で利用者が減少し、バス事業は厳しいと言われるが、そもそも日本のバス交通産業は岐路に立たされていた。長期的に見て人口が減少しつづけ、バス会社が多角化経営を進めて大きな債務を抱えるケースが少なくなかった。そこにコロナ禍がやってきて、厳しさがいっそう増した」

「乗合バス事業の収支状況について」(国土交通省)
「乗合バス事業の収支状況について」
(国土交通省)

アフターコロナの時代には乗客は戻るのだろうか。「おそらく戻らないでしょう、という見方が多い」。リモートワークの浸透、オンライン通販の普及により、人の移動が減るという見通しが少なくないからだ。

「そのなかでバス会社はどうやって生き残りを図るか。非常に難しい局面にあると思う。ただ公共交通の利用者が一方的に減少していくとは考えていない」と松本氏は語る。

理由は2つある。日本全体の人口は減少していくものの、65歳以上の高齢者人口は第2次ベビーブーム期(1971〜74年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年まで増え続ける(国立社会保障・人口問題研究所の推計)。健康寿命も延びているため、高齢者が外を出歩く機会は増える。ところが、高齢者の自動車免許更新は75歳以上に認知機能検査が課せられるなど厳しくなり、乗用車の運転を諦めて、公共交通を利用することを考えるようになる。

もうひとつは若者のクルマ離れ。東京や大阪といった大都市だけではなく、今や全国の県庁所在地レベルまで若者のクルマ離れが広がっているという。クルマを運転しない彼らは公共交通を利用する機会が多くなる。

「バス事業 というものが引き続き世の中から必要とされる存在だと思うし、そうあり続けられるよう事業運営をしていきたい」と松本氏。

乗合バス車両(出所:みちのりホールディングス)
乗合バス車両
(出所:みちのりホールディングス)