行政と住民が互いに協力して進める防災と地域活性化

愛媛県南部に位置する宇和島市は、江戸時代より伊達十万石の城下町として栄えてきた。愛媛みかん発祥の地として知られるが、真珠や真鯛の養殖はどちらも日本有数の生産地であり、近年は養殖本マグロの「だてまぐろ」が人気を高めている。

宇和島市街地、写真中央が宇和島伊達家10万石の本城である宇和島城
宇和島市街地、写真中央が宇和島伊達家10万石の本城である宇和島城

こうした地場産業を、宇和島市は市長を本部長とするシティセールス推進本部を中心に、市全体をブランド化していく “シティブランディング” に取り組んでいる。養殖真鯛の出荷がコロナ禍でストップしたことを受け、SNSや地元スーパーなどで展開したキャンペーン「#鯛たべよう」や、稚貝の大量死や需要低迷などで大きな影響を受ける真珠産業の応援企画「# With Pearl」がその一例だ。

一方「平成30年7月豪雨」では、市内各所で浸水被害や土砂崩れが多発。13名の尊い命が失われた。さらに、吉田地区では浄水場が被災して、最大6500世帯が断水。多くの市民が避難所生活を余儀なくされた。

「平成30年7月豪雨で痛感したのは、災害は行政だけでは乗り越えられないということです。土砂の撤去、道路啓開、被災者への給付金の支給など、行政がやるべき仕事は多い。地元の人たちの力を借りて、自助・共助をどう進めていくかが大きな課題です」と、 宇和島市の岡原文彰市長は語る。

宇和島市の岡原文彰市長
宇和島市の岡原文彰市長

南海トラフ巨大地震では、最大震度7、そして宇和島港で最大6m超の津波が約1時間で到達すると想定されている。市では、年間を通じて様々な形で避難訓練を行っており、今後もさらに取り組みを強化する考えだ。

「防災に終わりはないとよく言われますが、やるべきことは山積しています。そこで、防災活動の1つとして、 アプリでの発信にも力を入れています。観光目的で開発したアプリに防災や健康の機能も搭載し、頻繁にアップデートしながら、市内での普及を進めています。ダウンロード数は3万超。宇和島市の人口は7万人ですから、4割の人がダウンロードしている計算です。こうしたツールも様々な形で活用しながら、防災への取り組みを一層強化していきたいと考えています」(岡原市長)

町の魅力の発信と教育現場にも広げる防災対策

愛媛県の南端にある愛南町は、足摺宇和海国立公園のほぼ中央に位置する、風光明媚な町である。水産業と農業が中心で「愛南ゴールド(河内晩柑)」の生産量は日本一を誇る。

2020年度には、町民と行政職員によるワーキンググループが発足。統一ブランディング・ロゴマークとキャッチコピー「いろこい あいなん」を制作し、町が一体となって愛南町のPRを推進している。また、コロナ禍を機にネット活用を強化し、ふるさと納税の返礼品を通して特産品を紹介。2021年度の納税額は6億円超と、前年の約3倍に達した。

愛南町ブランディングロゴマークとキャッチコピー
愛南町ブランディングロゴマークとキャッチコピー

全国へ町の魅力を発信しながら、防災対策も着々と進めている。南海トラフ巨大地震では、最大震度7、最大津波高16.7mの被害想定が出ており、まずは避難路と避難場所を整備した。避難所が閉鎖されるまでの「応急対策期」に重点を置きつつ、災害被害を最小化するまちづくりの検討も進めている。

「愛南町では、命を守ることを最優先とし、災害の種類ごとに避難所を指定。地震・津波災害の避難所では、可搬型発電機や暖房機器、間仕切りや簡易ベッドなどを整備しました。しかし、沿岸部では地区内に指定避難所がなく、指定避難所と避難地域とのマッチングもまだこれから、という状況です。まずはそれを検討した上で、避難所の整備を進めたいと考えています」と、愛南町の清水雅文町長は語る。

愛南町の清水雅文町長
愛南町の清水雅文町長

海岸線の集落では、高台への避難路を約160ヵ所で整備。今後も引き続き、避難路と避難所の整備を早急に進める考えだ。また、小中学校での防災学習にも力を入れ、学年ごとに防災学習指導案を作成。生涯教育でも防災学習を推進し「地域に密着し機能する持続可能な防災地域社会システム(防災文化)の創造」を目指している。

「愛南町は、自然の豊かな恵みによって発展しましたが、自然は時に災害をもたらし、生命や財産を奪うこともある。災害リスクを正しく理解して、正しく恐れ、町民と地域と行政が一体となって、安心・安全に暮らせるまちづくりを進めたいと考えています」(清水町長)