大きな災害が起こると企業の意識は「緊急時対応」の重要性に向くが、残念ながら、時間の経過とともにそれが希薄になってしまうのも事実である。事前に取り決めた役割や体制は機能するのか、また、マニュアル通りに各自スムーズに動けるのかを確認するため、定期的な消防訓練が消防法で義務付けられている。とはいえ、年1回の訓練だけで、いつ起きるかわからない非常事態に対応できるとは限らない。有事にはマニュアルを調べている余裕もないため、「緊急対応をいかに適切に行うか」が大きな課題となっている。

この状況に応えるため、火災や地震発生時の緊急対応を支援するクラウド型防災支援ソフト「TASKis」を開発した。

災害発生時に組織が正しく動かなければ人命は救えない

能美防災の創業は大正13年に遡る。前年に発生した関東大震災で、焼け野原となった首都の惨状を目の当たりにした創業者・能美輝一は、火災予防の研究に着手。以来、同社は自動火災報知設備や消火設備などの研究開発に取り組み続けてきたリーディングカンパニーである。

同社がTASKisを開発した理由は何か。第1技術部イノベーション推進室長の由井伸幸氏はこう説明する。

「我々はハードウエアを主体として、火災をいち早く検知し、消火するための仕組みを提供してきました。しかし、ほとんどの方は、火災報知機のサイレンが鳴っても、どうしてよいかわからないのが実情です。単に仕組みを提供するだけでは『人の命と財産を守る』という我々の目的を達成することはできない。緊急時に対応するためには、自衛消防隊を組織して役割を分担し、各自がとるべき行動について情報共有することが必要です。この『人を動かす』という部分にアプローチしたのがTASKisです。火災検知がトリガーとなって、TASKisで人を動かし、消防設備を使っての消火や避難を迅速に行う。いわば防火・消火・避難のトータルケアを実現するツールなのです」

能美防災株式会社 技術本部 第1技術部 イノベーション推進室長 由井伸幸氏
能美防災株式会社
技術本部 第1技術部 イノベーション推進室長
由井伸幸氏

では、TASKisとはどのようなシステムなのだろうか。「特長は、災害の種類に応じて自分に割り振られた行動のtodoリストがスマートフォン上に通知される点にあります」と語るのは、同社総合企画室リーダーの加藤陽造氏だ。

自動火災報知機が火災を検知すると、その信号がIoTでクラウドサーバーに送信され、自衛消防隊員のスマホアプリに、火災の発生場所の地図と行動指示が送られる。TASKisは、あらかじめ設定された緊急対応マニュアルの内容と役割分担に応じて、隊員1人ひとりが取るべき行動を指示。アプリがナビゲーター役を務めてくれるので、緊急事態でも慌てることなく初動対応を行い、被害を最小化することができる。

TASKisは自衛消防隊それぞれのアプリに取るべき行動指示を通知し、迅速な初動対応を支援する
TASKisは自衛消防隊それぞれのアプリに取るべき行動指示を通知し、迅速な初動対応を支援する

「万一、怪我などで窮地に追い込まれても、スマホで写真を撮影・送信し、救助を要請することができます。また、管理者のパソコンに情報が集約されるので、送られてきた現場の画像を見ながら、緊急対応の実施状況を“見える化”することができます。災害現場の写真や地図を共有できるので、119番通報した際にわかりやすく状況を伝えられますし、“正常性バイアス”を打破して迅速な避難につなげることが可能です」と加藤氏。「IoTで自動火災報知機とシステムを連動させることで、緊急時に組織を動かし、災害発生から避難までの時間を短縮して、被害を最小限にとどめる。それがTASKis導入の最大のメリットです。また、近年、急速に普及したリモートワークの影響で、防火管理者が会社にないことも多くなっていますが、TASKisなら社外からも円滑に指示を出すことができます」と続けて語る。

能美防災株式会社 総合企画室リーダー 加藤陽造氏
能美防災株式会社
総合企画室リーダー
加藤陽造氏

TASKisの開発にあたり、有事のシステムということもあって難しい要件が課せられた。「我々の事業は人の命を預かっているので、有事に動かなければ話にならない。しかし、可用性を追求するとコストがかかる。コストと品質のバランスをいかにとるかが重要なポイントでした」と由井氏。

クラウドの無線ネットワークを安定的に運用するため、セキュアな環境が構築できる閉域網を利用。また、「有事でも使えるスマートフォンアプリ」にするため、デザイン思考に長けた開発会社をアサインした。さらに、人間工学の専門家にも意見を聞いてボタンのサイズや配置などを工夫し、緊急時にも使い勝手のよいデザインを心がけたという。

緊急時にこそ求められる迅速な情報収集

2019年のリリース以来、工場や物流施設など、大規模施設からの引き合いが相次いでいる。「工場には危険物や着火物が多く、出火すると一気に延焼してしまいます。しかも敷地が広いので、管理棟から火災の発生場所を特定するのが難しい。このため『どこで火災が起こっているのか、いち早く知りたい』というのがお客様のご要望でした。TASKisの導入で、そのご要望が実現できたと、大変ご好評をいただいています」と由井氏は語る。

また、ある物流施設では、テナントの防災意識の高まりから、火災への対応強化を迫られていた。現地で何が起きているのかをいち早く把握して、避難の指示を迅速に行いたいという思いから、配線工事が不要でスマホを活用するTASKisのコストメリットを高く評価。また、「火災以外でもTASKisを使いたい」とのニーズもあり、地震対応を行う仕組みも構築した。

TASKisは火災や地震のみならず、水害や疾病、機械故障などあらゆる緊急事態に対応できる、と加藤氏。この機能を活かして対象領域を拡大しつつ、新たなサービスの提案にもつなげたい、と期待を込める。

100年の歴史の中で培われた防災ノウハウと、最新のテクノロジーを融合させた次世代の防災システム。防災とITのタッグが、BCPの世界に新たな可能性を開きつつある。

由井伸幸氏 加藤陽造氏
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