自動車や電車で活用して事故を防ぐインフラに

ユレーマス地震速報システムの活用方法にはまだまだ大きな可能性がある。松尾氏は言う。「私たちがまさに“一歩先”のユレーマス活用法として考えているのが、自動車や電車で地震情報を受信する“移動体ユレーマス”です」

前述の通り、すでにユレーマスネットワークは首都圏全域をカバーしている。地震が発生した際、このネットワークで得た地震情報を自動車や電車で受信できるようにすることで、事故を防止しようという構想だ。

「ユレーマスの地震速報システムを活用することによって、大きな揺れが起こる前に安全に減速や停止といった制御行動がとれます。これによって自動車の多重衝突、電車の脱線線転倒といった事故はかなり防ぐことができるでしょう。首都圏であればすでにネットワークがあるので、自動車や電車のハードウエアに受信アプリケーションを搭載するだけで、すぐに実用化が可能です。現在、盛んに取り組みが進められている車の自動運転においても、地震情報インタフェースは必須ですが、そこでもユレーマスネットワークは大いに力を発揮できるはずです。自動車メーカーや電鉄会社と連携し、この移動体ユレーマスをぜひ実現したいですね。これは社会インフラにもなりうる技術だと考えています」(松尾氏)

営業本部長の柳澤氏は、大阪・京都近郊で巨大地震が起きた場合に鉄道へのユレーマスシステム導入がどれほどの効果を生むのかシミュレーションを行っている。朝8時のラッシュ時間帯に震度7の揺れが起こったと想定すると、走行中の電車の脱線事故によって相当数の死亡者と負傷者が発生するが、ユレーマスを設置することで1~8秒の猶予時間を確保できる。その結果、脱線事故の3分の1を防ぐことができるという。

「これよって救えた人命を生涯賃金で算出すると、あくまで概算ですが約6400億円の経済効果が得られることになります」

災害弱者を救うサービスも展開

現在、全国のユレーマスの導入状況は基幹ユレーマスが28基、地震計を設置せずにS波推定情報を提供するエリアユレーマスが17基の計45基。さらに2基の基幹ユレーマスが設置計画中だという。基幹ユレーマスの設置数が増えるほどネットワークのエリアが広がり、その地震情報を活用した防災、減災効果がより高まるわけで、その拡大が期待されるところだ。そして、さらなるユレーマス活用法について松尾氏は今後次のように語る。

「専用タブレット端末で地震情報を受け取れる『ユレマモリ』というサービスを提供しています。これは地震計を設置する必要もなく、サブスプリクション形式で安価に利用してもらえるサービス。一般的に揺れの発生までの猶予時間として5秒あれば、死傷者は80%軽減されると言われています。これを病院や老人介護施設、幼稚園・保育園、学校などで利用してもらうことで、かなりの減災が期待でき、いざというときに多くの災害弱者を救うことにつながるはずです。また、商業施設や公共機関で導入すれば、より早い避難誘導ができ、混乱や事故を防ぐことにもなるでしょう。個人のスマートフォンに搭載することも技術的には可能です。こういったさらなる領域にユレーマスの活用を広げて、人々の生命と財産を守ることに寄与していくことを目指します」

「ユレマモリ」の画面写真。普段はカレンダーが表示されているが、地震速報を受け取ると予想震度に応じて画面が切り替わる。(出所:ミエルカ防災)
「ユレマモリ」の画面写真。普段はカレンダーが表示されているが、地震速報を受け取ると予想震度に応じて画面が切り替わる。
(出所:ミエルカ防災)