これから本格的な登山シーズンを迎える。今シーズンはWithコロナ時代の新しいマナーを守りながら登山客が増えそうだが、その一方で山岳遭難の増加が懸念される。警察庁によると、2020年の山岳遭難の発生件数は2294件。そのうち死者・行方不明者は278人、負傷者974人、無事救助1445人だった。

「ライフハザードカンパニー(命を守る企業)」をコンセプトに掲げるAUTHENTIC JAPANは、登山者が遭難した時の命を守るための会員制捜索ヘリサービス「ココヘリ(COCOHELI)」を展開する。入会金3300円、年会費4015円(税込、キャンペーン価格)を支払うと、会員証でもある発信機が渡される。万が一の時、この発信機からの電波を頼りに捜索する。ほかに会員特典として、ヘリコプターによる捜索フライトが3回まで無料、他の登山者への賠償責任(最大1億円)やアウトドア用品の損害補償(最大3万円)も付いている。

会員制捜索ヘリサービス「ココヘリ(COCOHELI)」の発信機(左)と小型の受信機(右)。受信機には、発信機からの電波を受けて「発見しました」という文字のほか、距離と方向が表示される
会員制捜索ヘリサービス「ココヘリ(COCOHELI)」の発信機(左)と小型の受信機(右)。受信機には、発信機からの電波を受けて「発見しました」という文字のほか、距離と方向が表示される
(出所:2点ともAUTHENTIC JAPAN)

「現在の会員数は4万人。2024年の上場を目指していて、それまでに20万人に増やしたい」。代表取締役の久我一総氏は今後の事業目標について、そう意欲的に語る。

「従来の方法の中間を埋めてくれるもの」と出会う

久我氏は2002年に九州松下電器(現パナソニック コネクト)へ入社し、サプライチェーン部門でアジアや英国での勤務も経験し、その後希望により商品企画部門に異動して北米向けの電波関連商材を担当した。

ある日、帰りがけに2人の同僚が会社のホワイトボードの前で議論しているのを見かけた。2011年12月に電波法が改正され、特定の出力で免許がなくても920MHz帯を利用できるようになる。その電波をうまく使えば省電力の無線が可能になる。人命を救える機器が作れるかもしれない――。久我氏が耳にしたのはそんな内容だった。

「その日は魔が差したのでしょうか(笑)。じゃあ僕、会社つくりますよ。会社をつくって一緒にやりましょう」と軽いノリで言った久我氏は、会社に辞表を提出し、2012年12月に起業した。

AUTHENTIC JAPAN代表取締役の久我一総氏(撮影:長坂 邦宏)
AUTHENTIC JAPAN代表取締役の久我一総氏
(撮影:長坂 邦宏)

実はそのきっかけになる出来事が数年前に起きていた。祖母が認知症になり、一緒に行った大型スーパーで行方不明になってしまうことがあったのだ。当時、久我氏には小さな子どももいた。「お年寄りが徘徊したり、子どもが迷子になったりした時、うまく見つけられる機器がないものか」と思うようになった。

すでに当時、スマートタグを使ってGPS(全地球測位システム)機能やBluetoothで忘れ物を検出するトラッキングデバイスと呼ぶ製品があった。しかし、GPSでは大体の位置は分かるが、細かい場所までは特定できない。2.4Ghz帯を使うBluetoothで直接検出する方法では、公称100mの通信距離でも実際には20mくらいしか電波が届かない。しかも障害物があると電波が減衰しやすく、結局は見える範囲でしか使えない。

これに対して、920MHz帯の電波は障害物があっても回り込んで遠くまで届く。消費電力とバッテリーの長寿命化を実現できるメリットもある。総務省がIoT(モノのインターネット)の無線通信のために開放する920MHz帯は、「私にとって、かゆいところに手が届かない従来の方法の中間を埋めてくれるものだった」と久我氏は話す。