2021年初めから様々な産業に甚大な影響を及ぼしている半導体不足だが、一言で半導体と言っても様々な種類がある(図1)。パソコンに搭載しているCPUやGPU、メモリーもあれば、5G(第5世代移動通信システム)などの通信処理チップ、画像や音声の信号などを扱うアナログチップ、センサー、電源用のパワーデバイスなどは、それぞれ内部構造も製造方法も異なる。ひっ迫状況を正しく把握するため、半導体をいくつかに分類し、それぞれ現在の状況を整理してみよう(図2)。

図1 半導体の種類ごとに「不足」の状況は異なる
図1 半導体の種類ごとに「不足」の状況は異なる
出所:AdobeStock

最も混乱するのが「コモディティ・ロジック」

 

まずは、最新のCPUやGPU、さらにはスマートフォンやゲーム機などに搭載するSoC(複数機能を搭載したチップ)。これらのチップを作る企業には、米インテルのようにほぼ自社設計のチップだけを作っているところと、台湾TSMCのように顧客設計のチップを受託製造しているところの2種類がある。それぞれで需給バランスは異なる。

前者に関しては、需要増に応じて供給がタイトになるケースはあるものの半導体メーカーが需給バランスを管理できる。これに対して後者は、調達不安に駆られた顧客が調達量をそれぞれ増やし需給バランスを混乱させる場合がある。現在の半導体不足の状況はまさにそのような状況だ。

図2 半導体の種類別の市場概況
図2 半導体の種類別の市場概況
出所:経済産業省「半導体戦略(概略)」、Omdiaのデータを基に経済産業省が作成

次は、先端製造技術を使って製造するメモリー。メモリーメーカーは自社設計のチップを生産しているため、状況はインテルのCPUとほぼ同じ状況であり、基本的には応用機器の需要に応じて生産調整できる。さらにメモリーは仕様の標準化が進んでいるため別の調達先を確保しやすい。価格の上昇はあったとしても深刻な調達難に陥ることはない。

続いて車載用や産業用のマイコン、インタフェースチップなど「コモディティ・ロジック」と呼ばれるチップ。同じロジック系チップ(演算処理を目的とした半導体)ではあるが、CPUなどを製造する工場とは別の工場で作られている。この分野のチップは中国企業による生産量が多く、米中ハイテク争いによる禁輸措置の影響も受けているためサプライチェーンが最も混乱している。しかも工場の増強計画が少なく、混乱の長期化が心配される。

そしてアナログICやセンサー、パワーデバイス。近年これらのチップを受託製造するファウンドリーも登場しているが、一般的には自社開発したチップを自社製造している半導体メーカーが中心である。このため現時点で深刻な調達難の状態にはない。ただし、脱炭素化に向けた電力利用の効率化や工場や医療、農業などのデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けたIoTデバイス需要の増大などによって、慢性的な需要過多の状態にある。しかもロジック系ほど積極的な増産計画がないため、長期的にみて供給不足が心配される分野である。