すぐにもクルマが欲しいのに納車まで数カ月、車種によっては1年以上も待たなくてはならない。最新のゲーム機も手に入らず、家電の発売予定のずれ込みや値上がりが顕著。ビジネス向けの話題では自動車の生産台数の下方修正、工場の一時操業休止、部品在庫の積み増し――。最近注目を集めるこれらの話題は、いずれも「半導体不足」が原因だ。

そのインパクトは、企業であれば事業の売り上げや利益に直結。そして国単位ではGDP(国内総生産)にも影響するため、企業や業界にとどまらず国を挙げて取り組むテーマにもなっている。この状況はいつまで続くのか、どのように改善していくのか。そして個々の企業はどのように対処すべきか。それを考える前に、まずは今回の半導体不足の経緯をおさらいしよう。

図1 あらゆる産業の戦略物資となった半導体
図1 あらゆる産業の戦略物資となった半導体
出所:AdobeStock

自動車で顕在化、米国から世界に広がる

半導体不足は、まず自動車に搭載されるチップから顕在化した。現在の自動車には1台当たり50個~100個のマイコンが搭載され、「走る」「曲がる」「止まる」といった基本機能を実現し安全性や快適性を高めるために使われている。今の自動車は、精密に制御して動く「走るコンピューター」なのである(図2)。この車載マイコンが2020年暮れころから徐々に不足し、2021年に入ると米国に生産拠点を置く自動車メーカーなどが生産調整を余儀なくされた。

図2 車載マイコンと主な用途 (左)車載マイコン例「RENESAS R-CAR V3U」、(右)車載マイコンの主な用途<br>出所:(左)ルネサス エレクトロニクス、(右)日産自動車
図2 車載マイコンと主な用途
(左)車載マイコン例「RENESAS R-CAR V3U」、(右)車載マイコンの主な用途
出所:(左)ルネサス エレクトロニクス、(右)日産自動車

まず4月には、米ゼネラルモーターズが8カ所の工場を一時閉鎖状態にした。そこで自動車メーカーの9割以上が加盟する米国自動車イノベーション協会が、米国政府に対して車載半導体の安定供給のための支援を求める意見書を提出するに至った。ところが政府も即効性のある対策は打てず、7月になっても米フォード・モーターが北米の8工場で生産台数の削減幅を拡大させるなど影響はさらに広がった。自動運転などで半導体を多用する米テスラCEOのイーロン・マスク氏も「私たちはフルスピードで自動車を生産しているが、世界的な半導体不足の状況は依然としてかなり深刻だ」と懸念のコメントを発するまでになっている。

半導体不足に陥る企業・工場は米国から世界中に拡大した。日本の自動車メーカーも例外ではない。トヨタ自動車は当初「国内での半導体不足の影響は軽微」と語っていた。しかし、6月以降現在に至るまで、日本各地の工場を度々操業停止するようになった。ドイツや中国の自動車メーカーも同様の状況だ。その結果、新車の納期は軒並み大幅に遅延している。調査会社サスケハナ・ファイナンシャル・グループの予測では、世界の自動車業界は半導体不足によって1000億米ドル(約11兆円)超の売り上げを失うとみている。