回避には2つの潮流への対策が不可欠

次に半導体不足が拡大し深刻化した要因となった2つの潮流について解説する。

1番目の潮流は、あらゆる産業・業種でのデジタル・トランスフォーメーション(DX)や自動車業界でのCASE(コネクテッド、自動化、シェア&サービス、電動化)の進展である。先述したように、DXやCASEは、基本的に高度な半導体を湯水のごとく消費することを前提に成立する。こうしたトレンドに沿ったビジネスを推し進めるには、半導体を確実に入手できる生産体制の構築が欠かせない。

2番目の潮流は、水平分業化した半導体業界の構造である。20世紀の半導体メーカーは、生産するチップの品種を問わず自社で設計し生産していた。ところが、21世紀に入って、米インテルのCPUやメモリー、アナログIC、パワーデバイスなど一部を除いた大部分のロジック系チップ(演算処理を目的とした半導体)では、設計と製造を水平分業するようになった。

水平分業型の半導体産業の構造では、米エヌビディアや米AMD、米クアルコムなど生産設備を持たないファブレス半導体メーカーや、米アップルやグーグル、テスラなど独自チップを開発するIT企業や自動車メーカーなどがチップを設計する。一方、メーカーが設計したチップの製造を受託するファウンドリーは限られた数しか存在しない(図6)。なかでも先端チップの製造は、専らTSMC1社が請け負っている。

図6 世界のロジック系半導体チップのファウンドリー企業のシェア 出所:経済産業省「半導体戦略(概略)」、Omdiaのデータを基に経済産業省が作成
図6 世界のロジック系半導体チップのファウンドリー企業のシェア
出所:経済産業省「半導体戦略(概略)」、Omdiaのデータを基に経済産業省が作成

こうした水平分業型の業界構造が、半導体不足の影響を幅広い業界に拡大させた。限られた製造ラインに対して、多くの企業による奪い合いが起こったのだ。製造委託先が限定されるため、想定していた委託先が手一杯になったからといって別の委託先に変更するというわけにはいかない。

これら2つの潮流は、半導体サプライチェーンの需給バランスを適性化するうえでの長期的な課題である。何らかの対応策を考えないと、同様の深刻な半導体不足が再び起こる可能性がある。場合によっては、逆に半導体の供給過多の要因となり、半導体業界に深刻なダメージを与える要因にもなりかねない厄介な問題だ。