會澤高圧コンクリートが導入したオランダのスタートアップ企業「CyBe Construction(サイビ・コンストラクション)」製の3Dプリンターのデモの様子(約10分間)。積層しながら壁を作っていくイメージで、従来の構造物の制限にとらわれない柔軟なデザインを短時間で造形できる。

事例の1つめは、北海道に本社を置く會澤高圧コンクリート。同社は3Dプリンター出力によってコンクリートの世界にイノベーションを起こすべく奮闘している。常識に縛られない新たな造形技術がもたらす“一歩先”を、現地取材を軸に報告する

3Dプリンターの建設利用に注目、公衆トイレを出力

近年、3Dプリンターを建設分野に活用する動きが出てきている。米国では先ごろ、テキサス州オースティンに世界最大級の3Dプリント住宅街が誕生すると報じられた。3Dプリンターによる100棟の平屋住宅を建設する予定だという。そのほか欧州のオランダ、独、仏、政府が本腰を入れるサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などが3Dプリンター活用の先進国として知られる。

この流れを受け、日本でも徐々に3Dプリンターを建設分野に導入する取り組みが進んでいる。2018年には、官民連携組織「3Dプリンティングによるコンクリート構造物構築に関する研究委員会」が発足。すでにスーパーゼネコンの大林組、大成建設、清水建設がシェル型ベンチ、伝統建築物の装飾復原、自由曲面形状の大規模コンクリート柱の構築に成功するなど、一定の成果を上げた。

北海道苫小牧市に本社を置く會澤高圧コンクリートも、早い段階から建設における3Dプリンターの可能性に着目してきた。オランダのスタートアップ「CyBe Construction(サイビ・コンストラクション)」が開発した3Dプリンターを2018年に導入し、2020年9月には2基の公衆トイレを出力。北海道深川市の深川工場で従業員用トイレとして利用されている。

會澤高圧コンクリートが3Dプリンターで出力した2基の公衆トイレ(写真:小口正貴)
會澤高圧コンクリートが3Dプリンターで出力した2基の公衆トイレ
(写真:小口 正貴)

サイビの3Dプリンターはロボットアーム式で、入力した3次元データに基づいて特殊モルタル(セメントに水と砂を加えたもの)を出力する。積層しながら壁を作っていくイメージで、従来の構造物の制限にとらわれない柔軟なデザインを短時間で造形できるのが特徴だ。2020年に完成した深川工場の新建屋の外壁には、3Dプリンター出力によるパネルを採用。まるでアートを想起させる仕上がりとなっている。

深川工場外壁のパネル。工場建設時の過程を時間に沿って表現した(写真:小口正貴)
深川工場外壁のパネル。工場建設時の過程を時間に沿って表現した
(写真:小口 正貴)

手応えを得た同社は、3Dプリンター事業を加速させる。出力の依頼は引きも切らず、向こう半年以上は予約で埋まっているという。事業を推進するのは東大智氏。先に挙げた3Dプリンティング研究委員会のメンバーにも名を連ねる、入社10年目の若きリーダーである。東氏、そして同社のSDGsプロジェクトに携わる石井美穂氏に話を聞いた。

3Dプリンターが出力している様子。同社の鵡川工場(北海道むかわ町)で撮影(写真:小口正貴)
3Dプリンターが出力している様子。同社の鵡川工場(北海道むかわ町)で撮影
(写真:小口 正貴)