業界の「革命児」のもと、アイデアを次々と形に

會澤高圧コンクリートは1935年(昭和10年)に創業。北海道を中心に、全国・海外に事業所や工場を展開している。3代目である代表取締役社長の會澤祥弘氏は日本経済新聞社の元記者で、若い頃に中内功氏、堤清二氏といった日本を代表する実業家を取材。インターネット勃興期の1990年代中盤にニューヨーク特派員となり、現地でアマゾン・ドット・コムを創業したばかりのジェフ・ベゾス氏にインタビューした経験を持つ。

こうした背景もあり、帰国後に家業を継いでからは“外からの視点”でコンクリート業界の改革に次々と乗り出した。全社にパソコンを支給してIT化を推し進めたほか、2001年にはネットワーク型の小型自動化生コンプラント「OOPS!ウップス」で数々の賞を受賞するなど業界の革命児として名を知らしめてきた。

およそ10年前には、湧き出るアイデアを共有する場としてアイザワ技術研究所を設立。東氏は本社の生産科学本部と技術研究所員を兼務しながら活動する。

會澤高圧コンクリート 執行役員 生産科学本部 品質システム統括 東大智氏(写真:小口正貴)
會澤高圧コンクリート 執行役員 生産科学本部 品質システム統括 東大智氏
(写真:小口 正貴)

「アイザワ技術研究所では、會澤を含めたコアメンバーが情報を持ち寄って今後に向けた新規事業開発の展望などを話し合っています。3Dプリンターは、その会議から生まれたアイデア。コンクリート会社にとって画期的な技術になるとのことで採用に至りました」(東氏)

取材に訪れた鵡川工場では、さまざまなコンクリート製品を製造している。軟体のコンクリートを固めるには木材、あるいは鉄製の型枠が必要だが、3Dプリンターは“型枠レス”を実現する手段となる。

深川工場の公衆トイレがその例だ。同社が扱う材料押出堆積法の3Dプリンターでは、粗骨材(砂利)を含んだコンクリートそのものを出力できないことから、現状ではそのまま建築物に利用することは不可能。そのため深川工場のトイレは出力した特殊モルタルを型枠として、内部に生コンと鉄筋を注入した鉄筋コンクリート(RC)造としている。

これは地震国ならではの厳しい建築基準法の規制があるからだが、「逆の見方をすれば、多彩な形状の型枠が作れるということ」と東氏は強調する。完成したトイレの丸みを帯びた凸凹形状の壁を従来工法で手がけるとなれば、時間もコストもかなりかかると話す。

高さ1メートルほどのオブジェの出力に要した時間は約13分(写真:小口正貴)
高さ1メートルほどのオブジェの出力に要した時間は約13分
(写真:小口 正貴)

「3Dプリンター技術は、間違いなく工期全体の短縮につながります。型枠を作って外す作業がなくなりますから。いまでは木材も手に入りにくく、職人が減ってきている問題もあります。我々の方法なら、3次元データとロボットがあればボタンを押すだけで型枠を出力できてしまう。曲線を生かせるなどの自由度が高いので、表現の幅が格段に広がる点は大きなメリットです」(東氏)