モビリティを生かしたマイクロファクトリーや災害対策も

――2020年5月にはEXF-12の試作機を発表して話題となりました。形になるまでの道のりは?

最初は材料がリサイクルできる3Dプリンターを作りたいと思っていて、必ずしも大型にこだわってはいませんでした。切削加工の現場では金属の切粉(きりこ)を再利用するのが普通ですが、プラスチックは産廃業者に引き取ってもらったらおしまいです。しかし、工場から排出される廃プラスチックの量は凄まじく、コンビニ袋を有料化したところで大勢に影響はありません。ならば、工場単位である程度リサイクルできるシステムが必要なのでは?との発想が開発の発端です。

そこから工場で利用できる大型モデルへとつながるのですが、今の3Dプリンターの構造をそのまま大きくしても工業用途には耐えられないことは目に見えていました。これまでのキャリアで工作機械を間近で見てきたこともあり、工作機械に匹敵するクオリティがなければ使えないと確信していました。そこで切削加工機の製造企業である岩間工業所に相談して、工作機械メーカーの協力で2019年に着手したのがEXF-12です。

――こだわりのポイントを教えてください。

まずは、ファナックのコントローラーを採用したこと。ファナック製品は非常に高額でオーバースペックでないかとの意見もありましたが、Gコード制御を自由にできる点と、なにより世界で圧倒的なシェアを誇ります。つまり、世界戦略を立てやすい利点があるのです。

ファナック製のコントローラーを採用(出所:エクストラボールド)
ファナック製のコントローラーを採用
(出所:エクストラボールド)

次は、独自開発の射出成形3Dプリントヘッドを搭載したこと。以前、CAMソフトを開発していたときに工場をたくさん訪問しましたが、マシニングセンター(多種類の加工を行なうNC工作機械)のオペレーターは工作機械にすごく愛着を持っています。そこにいきなり3Dプリンターを導入しても、従業員が必ずしも協力的な姿勢を取ってくれるとは考えにくい。

例えば自動工具交換装置(ATC)に入るような、既存の工作機械でオプションとして利用できる3Dプリントヘッドを作れば、日本中の工作機械を持っている工場に3Dプリンターが一気に入る可能性があると考えました。いわば3Dプリンターの機能を後付けするわけです。さらに廃プラスチックを粉砕してリペレットすれば材料としても使え、工場内でリサイクルが成立します。

独自開発の射出成形3Dプリントヘッド(出所:エクストラボールド)
独自開発の射出成形3Dプリントヘッド
(出所:エクストラボールド)

将来は大型3Dプリンターだけではなく、さまざまな3Dプリントヘッドの研究開発にも注力するつもりです。愛着のあるマシニングセンターをそのまま3Dプリンターとしても使えるとなれば、どこにも真似できない武器になるはずです。

――なるほど。ものづくり現場での究極の循環と言えますね。

そうですね。エクストラボールドにはEXF-12の試作機が置いてあり、試験研究の用途で自動車、建築、建材などいろんな業界の方が訪れます。例えば樹脂の大きな型材、鋳型のマスターモデルを作りたいとのニーズはたくさんありますが、今まではできなかったために諦めていたとの声をよく聞きます。

材料は汎用的な樹脂ペレットを利用(出所:エクストラボールド)
材料は汎用的な樹脂ペレットを利用
(出所:エクストラボールド)

ただ、樹脂はやればやるほど奥が深く難しい。日本は特にメーカーごとに専用の材料を作ることから海外に比べてとてつもなく材料の種類が多いそうなんです。リサイクルのみならず、これもまた材料の選択肢を狭めない理由です。材料が自由ということは、ボタンを押せば誰でも同じ品質に仕上がるような「簡単ものづくり」のイメージの3Dプリンターとは一線を画します。ですから我々自身は、その構造も含めてEXF-12を大型3Dプリンターではなく、大型3D積層造形機と呼んでいます。

――EXF-12はコンテナサイズと聞きましたが、このサイズにした理由は。

モビリティ(可動性)を意識したからです。12は12フィートの意味で、JRの標準貨物コンテナにすっぽりと入るサイズです。私はもともとコンテナの概念がすごく好きで、将来的にはコンテナタイプの3Dプリンター、切削機、塗装ブースなどをユニット単位で組み合わせてマイクロファクトリーを構築するのが夢です。

コンテナ収容のイメージ(出所:エクストラボールド)
コンテナ収容のイメージ
(出所:エクストラボールド)

これが現実のものとなれば、災害時にも移動できるので今まで不可能だったことが可能になってきます。以前、ボランティアで被災地の瓦礫除去に参加したことがありますが、踏み抜き防止の靴を履かないと危険です。でも皆が持ってきているとは限らないじゃないですか。そこにEXF-12を運べば、万能サイズの踏み抜き防止サンダルを1足10分程度で作れるようになります。

また、被災地で活用できる災害時仮設モジュールも試作済みです。ベッド、ソファー、椅子などをその場で1時間ほどの短時間の間に量産できます。2020年には大阪大学のプロジェクトに協力して、フェイスシールドのフレームを1時間で40個出力することに成功しました。

大型3Dプリンターで製造した災害時に簡易ベッドとしても使えるスツール(出所:エクストラボールド)
大型3Dプリンターで製造した災害時に簡易ベッドとしても使えるスツール
(出所:エクストラボールド)
コロナ禍でフェイスシールド不足の際には製造で協力した(出所:エクストラボールド)
コロナ禍でフェイスシールド不足の際には製造で協力した
(出所:エクストラボールド)

いずれにせよ、21世紀にビジネスを展開する上で、社会課題を解決するテーマは最優先だと思っています。今は大量生産・大量消費の社会から脱却している過渡期であり、適材適所のプロダクトが生まれつつあります。中央集権型ではないものづくりが求められる時代にあって、エクストラボールドは最適な提案やソリューション構築ができると自負しています。