気候変動や地球温暖化への対策が急務とされるいま、脱炭素、カーボンニュートラルといったキーワードが世界を賑わせている。その中で注目されるのが、世界最小の二酸化炭素回収マシン「ひやっしー」だ。

二酸化炭素回収マシン第2世代機「ひやっしー2」(出所:炭素回収技術研究機構(CRRA))
二酸化炭素回収マシン第2世代機「ひやっしー2」
(出所:炭素回収技術研究機構(CRRA))

“初めての火星人”になるために

地球を冷やすという意味が込められたこの機械。大きさはスーツケースほどで、あたかも除湿機のようにボタンひとつで周囲の二酸化炭素を除去できる。1年間で100キログラムの二酸化炭素を回収する次世代型のひやっしーの開発を目指している。本体の上にはモニターが載っていて、その場の二酸化炭素の量が少なければ笑顔が、多ければ苦しそうな表情が表示される。人工知能(AI)も搭載していて、雑談したり冗談を飛ばしたりする人間味があるのも特徴だ(次世代型ひやっしーでは二酸化炭素回収量の向上に主眼を置くため、この機能はユーザーの希望によるオプションとなる予定)。ネーミングといい見た目といい、最先端の技術が盛り込まれていると感じさせない、何とも“ゆるふわ”な雰囲気が漂っている。

これを開発したのが村木風海氏である。東京大学工学部化学生命工学科3年に在籍する現役東大生にして、炭素回収技術研究機構(CRRA:シーラ)の代表理事・機構長でもある。

炭素回収技術研究機構(CRRA)代表理事・機構長の村木風海氏(撮影:新関雅士、以下出所記載のないものは同)
炭素回収技術研究機構(CRRA)代表理事・機構長の村木風海氏
(撮影:新関雅士、以下出所記載のないものは同)

研究者としての原点は、小学4年で理論物理学者スティーブン・ホーキング博士の書いた、子供向けの宇宙冒険小説を読んだことにある。赤い大地に青い夕陽が沈むという火星の風景に心を奪われ、いてもたってもいられなくなった。

「何が何でも火星に行ってみたい、いや、火星に住む“初めての火星人”になるんだ! と、心に決めたんです」

とはいえ、火星の大気は二酸化炭素が95パーセントを占め、そのままでは暮らすどころか降り立つこともままならない。そうして村木氏は熱に浮かされたように、二酸化炭素を回収・除去する研究にどっぷりと浸かっていく。折しも地球規模で環境問題が深刻化する中、二酸化炭素の低減は温暖化対策の切り札にもなるということで、人類の火星移住というテーマと並行して研究を続けてきた。