生クリームの入ったペットボトルを手にしてヒップホップダンスを踊る。するとペットボトルの中で出来上がったのはバターだった。「振った衝撃でたんぱく質の膜がはがれて、脂肪が固まるんだよ」

図などを交えながらそう子どもたちに語りかけるのは、サイエンスエンターテイナーの五十嵐美樹氏だ。ゴールデンウイークの真っ只中、21周年記念の日に埼玉県の越谷市科学技術体験センター「ミラクル」でサイエンスショーを開催し、小学生以下の子どもたちとその保護者約200人が集まった。

越谷市科学技術体験センターのサイエンスショーでも披露された五十嵐美樹氏の代名詞「ダンシングバターシェイク」(撮影:長坂邦宏、以下の写真も)
YouTube「ミキラボ・キッズ」では様々な実験が見られる

今回のサイエンスショーはSDGs(持続可能な開発目標)をテーマにクイズを交えながら進んだ。温暖化の原因の一つと言われている二酸化炭素について取り上げたり、風力発電や水力発電に使われている原理をコイルと磁石を使って実験したり、リサイクルといったキーワードを使った実験を行ったりする。その内容は実に多彩で、どれも充実している。彼女のパフォーマンスや話術に魅了され、子どもたちもノリノリだ。

双方向のコミュニケーションやクイズ形式などを取り入れ、子どもたちはすぐに打ち解けていく
双方向のコミュニケーションやクイズ形式などを取り入れ、子どもたちはすぐに打ち解けていく

月から金は高速道路、土日は科学実験教室

五十嵐氏は、学部で高温超伝導物質の研究を行い、卒業後は大手電機メーカーに就職。セールスエンジニアとして高速道路の交通管制システムの業務を担当した。

「社会と科学技術をつなぐ仕事したい」という思いが強くあったことから、電機メーカー時代は「月曜から金曜は全国各地の高速道路を回りつつ、土日は科学実験教室のボランティアをしていた」という。

勤務先の建物の1階に科学館があり、調べたところ隣の部署の部長が科学実験教室を担当していたため、その部長に頼み込んで科学実験教室をボランティアで手伝った。「それだけでは物足りず、いろんな企画会社や科学館に企画書を送っていた」(五十嵐氏)。

早くから「社会と科学技術をつなぐ仕事したい」と考えていた五十嵐美樹氏
早くから「社会と科学技術をつなぐ仕事したい」と考えていた五十嵐美樹氏

科学実験教室などを含む「科学の楽しさを表現する活動」に専念するため、電機メーカーは1年半で退職する。しかし科学実験教室などのボランティア経験こそあったものの、「科学について子どもたちにどう伝えたらいいのか、現場に立つほど勉強が必要だと思った」。

このため、現在も特任研究員をしているジャパンGEMS(Great Explorations in Math and Science、ジェムズ)センターで科学の体験学習プログラムなどを学ぶ。同センターは米カリフォルニア大学バークレー校の付属機関LHS(ローレンスホール科学教育研究所)で開発された幼稚園児から高校生を対象にした体験学習の理論に基づくプログラムを日本に紹介する組織で、公益社団法人日本環境教育フォーラム(JEEF)内に2001年に設立されていた。

ジャパンGEMSセンターが提供するワークショッププロクラムの特徴は「子どもたちに単に手順を教えて楽しませるというものではなく、子どもたちに自由に調査させる、いわゆる探究的なもの」だった。そうしたワークショッププログラムを学ぶ一方で、海外の教材や米国の論文や取り組みを参考にしながら、「科学の楽しさを伝える方法」を必死に学んだ。