クラウド型試合映像分析システム「D2I-JUDO」を開発

新たな試合映像解析システムを開発するため、石井氏は日本マイクロソフトに声をかけ、同社からスポーツのデータ解析を手がけるデータスタジアム(東京・港区)を紹介され、3者でミーティングを開始。石井氏がイメージする設計案に沿って試合映像データ分析システムの開発が2014年から本格的に進められた。

翌15年に完成したのは、クラウドコンピューティングサービス「Microsoft Azure」を活用した試合映像分析システム「D2I-JUDO」だった。データスタジアムは野球やサッカー、ラクビー、バレーボールなどの試合映像をデータ化し、チーム戦術などに役立てるソリューションを提供しており、ウェブ上で映像の編集から共有まで行える「Movie Viewer」を製品化し広く使われていた。こうしたソリューションをベースにして「GOJIRA(ゴジラ)」の愛称を持つ「D2I-JUDO」が開発されたのだ。

「Surface Pro」や「Surface book」といったノートPCを使い手元で試合映像やデータを確認できるほか、ウェブ会議システムとして使われる大画面デバイス「Surface Hub」をトレーニング会場に設置し、コーチや選手と一緒にその場でデータを確認できるようにした。

1回の国際大会で700ぐらい試合が行われる。試合会場となるマット数は3つあるので、3班に分かれて試合映像を撮影する。対象とする国際大会はオリンピック、世界選手権、マスターズ、グランドスラム、グランプリ、世界ジュニアなどだ。これまでに約4000人のライバル選手について4万件以上の試合映像を記録した。それにより、各選手の試合成績、組手、技の傾向、得失点の時間帯、審判が「指導」の出す傾向など様々なデータが確認できるようなっている。

映像分析システム「D2I-JUDO」には約4000人の選手の試合動画が見られ、試合ごとに取得したポイント、その時間帯が確認できる
映像分析システム「D2I-JUDO」には約4000人の選手の試合動画が見られ、試合ごとに取得したポイント、その時間帯が確認できる
(提供:石井孝法氏)
選手ごとに得点および失点した技の種類と回数、その時間帯などについても一覧できる
選手ごとに得点および失点した技の種類と回数、その時間帯などについても一覧できる
(提供:石井孝法氏)
技をかけた手、技の方向、組手が表示される
技をかけた手、技の方向、組手が表示される
(提供:石井孝法氏)

石井氏は工学系などで幅広く利用されている数値解析ソフトウエア「MTLAB」を使い、自分でプログラムを書き、どちらの組手が強いか、どちらの技が切れるかといったことを1万回ほどのループをかけて解析する。

東京五輪の組み合わせ表(ドロー)が発表された後、石井氏はデータ解析に基づいて選手の優勝確率をはじき出し、自身のブログに「TOKYO2020柔道メダル予測」として開会式の前日、7月22日に公表している。

最も優勝確率が高かったのは60キロ級の高藤直寿選手で51.22%。66キロ級の阿部一二三選手は34.18%、73キロ級の大野将平選手は44.33%、そして女子52キロ級の阿部詩選手は33.63%となった。有力選手が複数いると優勝確率は分散し低下する傾向にあり、1万回試合を繰り返せばどんな確率で勝利するかという石井氏の計算方法だと優勝確率は高くても40%程度だという。高藤選手の50%超えはかなり高い数値だったといえる。

ブログ「TAKAHIRO ISHII」(https://takanoriishii.jp)の「ごりんめだるよそく」に掲載された男子60キロ級の優勝確率。金メダルを獲得した高藤直寿選手は51.22%という高い優勝確率となった
ブログ「TAKANORI ISHII」(https://takanoriishii.jp)の「ごりんめだるよそく」に掲載された男子60キロ級の優勝確率。金メダルを獲得した高藤直寿選手は51.22%という高い優勝確率となった
(提供:石井孝法氏)