360°見渡すかぎりの本棚に囲まれた「本棚劇場」を背景に、本の表紙がズラリと並ぶ。VR(仮想現実)ゴーグルを通して見ると、新たな本との出会いの空間が圧倒的なスケール感で迫る−−。

「本棚劇場」の画像を背景に書影が並ぶVR空間(提供:KADOKAWA)
「本棚劇場」の画像を背景に書影が並ぶVR空間
(提供:KADOKAWA)

KADOKAWAと、書店のDX(デジタルトランスフォーメーション)を手がけるスタートアップ企業のX(東京都港区)は、角川武蔵野ミュージアム内の本棚劇場をVR体験できるイベントを2021年10月末から11月末に全国の13書店で開催した。

コロナ禍で制約が多い中、感染防止対策を行い、体験イベントには1000人以上が足を運んだ。「書店送客という第一の目標は十分に成果を上げられた」と話すKADOKAWA営業企画局の劉宏輝氏は、直営のダ・ヴィンチストアの運営担当。ダ・ヴィンチストア本店では体験者の行列が途切れず、人数制限を行うほどの人気だったという。

KADOKAWA営業企画局営業統括部促進企画課の劉宏輝氏
KADOKAWA営業企画局営業統括部促進企画課の劉宏輝氏
(撮影:長坂 邦宏、以下出所記載のないものは同)

VR体験は将来のメタバースに向けた実験

本棚劇場は、2020年12月のNHK紅白歌合戦でYOASOBIが歌唱したことで話題を集め、広く知られるようになった。日本最大級のポップカルチャーの発信拠点として「ところざわサクラタウン」(埼玉県所沢市)が20年11月にグランドオープン。KADOKAWAの書籍製造・物流工場と新オフィス、ホテル、イベントホール、レストラン、ショップ、神社のほかに、タウンの一角には角川武蔵野ミュージアムがそびえ立つ。本棚劇場はそのミュージアムの中にある。

美術館、博物館、図書館が融合した複合文化施設の「角川武蔵野ミュージアム」。中国から運んだ岩石を組み上げた外観が特徴的だ
美術館、博物館、図書館が融合した複合文化施設の「角川武蔵野ミュージアム」。中国から運んだ岩石を組み上げた外観が特徴的だ

高さ約8メートルの巨大な本棚に並ぶ約3万冊の本。KADOKAWAの出版物のほか、創業者・角川源義、文芸評論家・山本健吉、歴史学者・竹内理三、言語学者・外間守善らの蔵書だ。本棚は複雑に入り組み、「脳の構造をイメージした」つくりとのことだが、それは館長を務める著述家・松岡正剛氏とデザインを監修した建築家・隈研吾氏の語らいの中から生まれた。

角川武蔵野ミュージアム内にある「本棚劇場」。3万冊の書籍を配架する
角川武蔵野ミュージアム内にある「本棚劇場」。3万冊の書籍を配架する

「VR体験は将来のメタバースに向けた実験的な意味合いがあり、メインはあくまでもプロモーション。仮想世界は5年以内に相当変わるだろうから、今後はテクノロジーの進化を見ながら施策を考えていく」。そう語るのはデジタルマーケティング室の楫野晋司氏。イベントの統括責任者だ。

KADOKAWAデジタルマーケティング室デジタルマーケティング課 課長 兼 デジタルプロモーション課 課長の楫野 晋司氏
KADOKAWAデジタルマーケティング室デジタルマーケティング課 課長
兼 デジタルプロモーション課 課長の楫野 晋司氏

ビジネスの世界で新たなキーワードとして急浮上するメタバースとは、インターネット上の仮想的な3次元空間のこと。VRゴーグルを装着するなどして仮想空間に入り込み、分身キャラクターの「アバター」を使って、ゲームや会議をはじめ、ショッピング、エンターテインメント、スポーツなどを楽しむことへの活用が期待されている。

迫りくるメタバースの時代を想定し、KADOKAWAは何をやろうとしているのか。