経済産業省が進める「STEAMライブラリー」

パネリスト 経済産業省 商務・サービスグループ サービス政策課長(併)教育産業室長 浅野大介氏

浅野 経済産業省は、文部科学省と共に「GIGAスクール構想」を進める前の、2018年度から「未来の教室」というプロジェクトを実施しています。児童・生徒1人1台のコンピューター端末が整備された環境で、どのような学びが実現できるのかを小中学校・高等学校の現場で実証してきました。この成果が、「GIGAスクール構想」につながっていきました。

 そこで出てきたキーワードが「個別最適化」と「STEAM化」です。まず、個別最適化は「誰1人取り残さない」ということを目指していますが、もう一つ重要なのが「とどめ置かない」ということです。どんどん先に進んで学べる子供を、ほかの子の学びの速度に合わせてとどめ置くことはしないという考えです。それぞれの児童・生徒が自分のペースで一歩一歩自立して学んでいけるように、デジタルのアルゴリズムを使って個別最適化した学びを実現します。もう一つ重要なのが「学びのSTEAM化」です。未来に向けて新しい価値を生み出していく子供たちを育むための学びを進めていきます。

 こうした教育イノベーションを生み出すために、文部科学省は学校教育、経済産業省は教育産業の面から取り組み、産業界や大学・教育機関を巻き込んで、インターネットを通じた新しい学びに挑戦しています。

経済産業省商務・サービスグループ サービス政策課長(併)教育産業室長の浅野大介氏は、なぜ教育を「再デザイン」する必要があるのかについて説明した

 OECDは、近未来に子供たちに求められるコンピテンシー(行動特性)や、こうしたコンピテンシーの育成につながるカリキュラムや教授法、学習評価について検討するプロジェクト「Education 2030」を進めています。なぜ教育にイノベーションが必要なのかということは、Education 2030が掲げる「新しい価値を創造する力」「対立やジレンマを克服する力」「責任ある行動をとる力」に集約されていると思います。

 「いいシゴト」をする人が多い社会は、自助や共助、公助の質が上がっていきます。つまり、教育の場とは「いいシゴトをする」習慣をつくる場であるべきだと思います。こうした教育を実現していく上で重要なのが「学びのSTEAM化」なのです。

 私たちが仕事などで課題を解決していくには、学校や大学の教科で学んできたことを横断的に総動員した学際的なやり方が必要です。仕事をするということは実は「STEAM」なのです。こうした未来を生きていく子供たちの新しい学びを、学校現場で整備が進むGIGAスクール環境でどう実践していくかに取り組んでいます。

 いま、経済産業省では中学校・高等学校の「学びのSTEAM化」を進める上で教育コンテンツなどのデータベースとなる「STEAMライブラリー」を開発しています。米国の公共放送ネットワークのPBSが提供する「PBS Learning Media」を参考モデルにしたもので、例えば「飛行機はなぜ飛ぶのか」「飛行機はどう作られるのか」「次世代飛行機のイノベーション」などといったトピックを入り口にして、物理や化学、数学といった教科に入り込んでいく仕掛けを提供しています。

経済産業省が開発を進めるSTEAMライブラリーの参考モデルとなった米PBS Learning Mediaでは、学ぶテーマやトピックから生徒の関心を引くような動画や画像が提供され、そこから物理や数学を学ぶような仕掛けになっている

 PBS Learning Mediaでは、リアルな社会課題や未来に向けたテーマに取り組む探究活動を通じて、必要な基礎的な教科知識は生徒自身がどんどん学んでいけます。また教員向けの教え方や指導案も提供されています。

 同様のことをSTEAMライブラリーで実現しようとしています。また、学校の壁を越えた生徒の協働的で深い学びを助け、教員や研究者、企業などが交わることができる双方向の探究活動を支えることができるようなプラットフォームにしていきたいと考えています。

 まず、2021年3月に最初のバージョンを無償で利用できるように公開します。今回提供するトピックはそれぞれSDGs(持続可能な開発目標)の17の目標に紐づけたさまざまな社会課題や未来に向けたテーマで、子供たちの興味を引くことを探求の入り口になるようにします。

 いま、このSTEAMライブラリーを授業に活用してくれるモニター校や教員を募集しています。特に高校の総合探求や理数探求、公共等での活用を念頭に置いていますが、中学校でも教員の教え方によっては利用できると考えています。