EdTech導入補助金を最大限に活用

蔵下 修道中学校・修道高等学校では2020年に経済産業省の「EdTech導入補助金」を活用して「日経パソコンEdu」(日経BP)や「ラーニング・スケルトン」(メディア・ファイブ)など3件のEdTechサービスを導入しました。これらのEdTechサービスを授業で実際に使ってみて、生徒のスキルや価値観が上がったことを実感しています。こうしたことは実践してみなければわからないことなので、ぜひ多くの学校でもこうした実証事業に参加してもらいたいと考えています。

 実践の一例を紹介すると、「観光予報データサイエンス」という単元の中で、JTBの「観光予報プラットフォーム」というデータベース・サービスを活用しました。生徒が選んだ観光地をより良くする方策や、課題を解決する方法といったことを検討し、生徒がチームで協力しながら、最終的にはポスター・セッションで発表しきました。

浅野 EdTech導入補助金に関して補足しますと、EdTech事業者に補助金を出し、全国の学校で活用してもらうという取り組みです。2020年には全国の全小中高等学校の12%に当たる4304校が実証事業に参加しました。

経済産業省によるEdTech導入補助金は、全国で4304校が実証事業に参加したが、都道府県など自治体間の差が大きく開いたことも課題となっている

 ただ、実際に活用した状況を細かくみていくと、都道府県や自治体ごとに地域間の開きが大きいのが実情です。つまり、活用している都道府県では多くの学校が利用したいと手を上げてくれましたが、参加校がほとんどない自治体もあります。

 補助金の利用に関して県の中で横並びを気にして申請しなかったり、来年度の導入を確約できない中で導入することを躊躇したりした学校も多かったようです。ただ、現実的には保護者は教材費や学用品費を相当額負担しています。こうした費用の配分を見直すことで、必要なEdTechサービスの費用を賄うことができるのではないかと考えています。

パネリスト 日本マイクロソフト 業務執行役員 文教営業統括本部 統括本部長 中井陽子氏

中井 教育現場にようやくパソコンがそろって1人1台環境が実現しつつある中で、こうした環境を生かして何を学んでいくかというフェーズに入ったと感じています。

 ここでは日本マイクロソフトが取り組んできた事例をひとつ紹介させていただきます。多種多様なブロックを構築して世界を構築していくゲーム「Minecraft」(マインクラフト)を使って、全国の学校に参加してもらう作品コンテスト「Minecraftカップ」を実施しました。

日本マイクロソフトはMinecraftを使って児童・生徒が理想の街づくりに挑む「Minecraftカップ」を実施している。2019年に続いて、2020年も全国大会を開催しており、最終審査会・授賞式は2021年2月21日にオンラインで開催される予定

 2000人近い児童・生徒が100くらいのチームに分かれて街づくりに取り組みました。子供たちはチームで毎日相談をしながら、協力して理想の街を作っていきます。子供たちからは協力することの大切さや、それぞれの役割や多様性、算数などの教科の重要性を認識したというような感想が多くありました。Minecraftはまさにプログラミングでデジタルなものづくりを行うSTEAMの教材で、子供たちの総合的な力を短期間で伸ばしていけることを実感しました。小中学校の児童・生徒は約800万人います。これだけの子供たちがSTEAMの考え方を身に付けて社会に出てきてくれたら、とても頼もしいと感じています。

 こうした学びを進めるために、教員の方々の立ち位置が変わってくるとも感じています。解答を教えるのではなく、子供たちに考え方を提示したり解決に導いていったりするファシリテートがますます重要になり、STEAMやICTの果たす役割が高まっていくと思います。

森本 多くの学校で同じような取り組みをしようというとき、どの授業や場面でどのような教員が関わって実施していけばいいのか、ということが議論になります。例えば、先ほど修道中学校の蔵下先生が紹介した美術の授業で行なった学びは、他の教科で習得・育成したことを美術科の探究の場として実施した教科横断型の学びの集大成です。こうした学びをどういうカリキュラムの中に位置づけるのか、カリキュラム・マネジメントが本当に必要になってくると思います。

蔵下 本校でも必ずしもカリキュラム・マネジメントが確立できているわけではありませんが、それぞれの教員が率先してICTを活用して生徒がどう変わってきたかを目の当たりにすることで、ほかの教員もICT活用に積極的になっていけばよいと感じています。

浅野 前述のEdTech導入補助金を使って、EdTechサービスを導入した、長野県立坂城高等学校の例を紹介します。すららネットのデジタル教材「すらら」を使って、例えば中学校以前の学習単元でつまずいた生徒がそこまで戻って学び直したり、学力のある子はどんどん先に進んだりできるようにしました。逆に、生徒自身が振り返り学習をして数学などで分かることが増えていき、それを積み重ねていくことでほかの探究的な学びに対しての取り組みの姿勢も大きく変わりました。そうした生徒の変化を見て、中学校の単元まで戻らせていては高校の教育課程を「消化」する時間が無くなるのではないかと不安に思っていた教員の認識も変わっていきました。