ライフスタイルの変化に対応して、パソコンの新しい使い方を提案

——2020年のパソコン市場をどのように見ていますか。

 2019年に比べ、法人向けの需要が半減すると予測する調査会社もあります。Windows 10への買い換えと消費増税による駆け込み需要の反動に加え、東京オリンピック後の景気後退がその理由のようです。

 しかし、私はそこまで落ち込むとは見ていません。企業の働き方改革に対する取り組みは依然として旺盛です。いつでも、どこでも仕事ができるモバイルパソコンの販売台数は前年比で約170%と伸びており、今年もこの傾向は続くと見ています。加えて、2019年のように多くはないものの、2020年もWindows 10への買い換えが期待できます。

 当社は国内でパソコンの企画・開発から設計・製造・販売・サポートまで一貫して行っています。この強みを生かし、個人向けパソコンでは日本人のライフスタイルの変化に対応する製品づくりとともに新しい使い方を提案していきます。例えば、住環境が変化し、夕食後に家族そろってリビングでくつろぐライフスタイルも定着しつつあるように思います。テレビを見たり、本を読んだり、各人がバラバラなことをしていても、共通の話題になるとパソコンでインターネットにつないで確かめたりする。ノートパソコンのディスプレイも、みんなで画面をのぞき込める大型の17.3型モデルがよく売れています。

 

 AIスピーカーを置く家庭も増えています。パソコンでも同じような使い方が可能です。富士通のパソコンを音声で操作するアプリケーション「いつもアシスト ふくまろ」を使えば、パソコンに取り込んだ音楽や写真を再生したり、パソコンのカメラ機能を使って外出中に部屋の写真をスマートフォンに送信したりできます。ふくまろは将来、家庭内のデータ処理の中核を担い、いわば家族とペットの中間のような、便利さ以上の身近な存在として生活に入り込めるように進化させていきます。いずれ、ふくまろがインタフェースになり、パソコン本体は机の下など部屋のどこにあってもいい時代がやってくるでしょう。

——パソコン以外の事業はどのように進めていきますか。

 Windows 10への買い換え需要がいずれ一段落することを見越して、数年前からパソコンの需要減をカバーするための新しい領域の製品開発に注力してきました。社会に必要とされるコンピューティングを実現するという当社の方向性とも合致するものです。例えば、電子ペーパー「QUADERNO」(クアデルノ)は専用のスタイラスペンを使って紙の手帳のように手書きでメモしたり、PDF文書に書き込んだりできる製品で、予想を上回る売れ行きです。私も仕事で使っています。自分で書いた内容は結構覚えており、キーボードやタッチキーで入力するパソコン、タブレットが全盛の時代でも、手書き作業は大切だと再認識しています。

電子ペーパー「QUADERNO」(クアデルノ)

 教育市場向けには、無線LANやコンテンツサーバーの機能を搭載する「MIB(Men in Box)」を開発しています。MIBは、授業や会議での利用を想定して開発したものです。例えば、授業で使うコンテンツをMIBに取り込み、子供たちがタブレットから無線LANを介してアクセスすれば、ネットワークの帯域を使わずにスムーズに授業ができるようになります。今後は、MIBとタブレットを組み合わせた提案も行っていくつもりです。

 もう一つ、新領域の製品としてエッジAIコンピューター「Infini-Brain」(インフィニブレイン)を開発しています。AIの処理を行うGPUを搭載する高性能な端末で、どんな分野で能力を発揮できるのか検討を進めています。現在は陸上の「十種競技」の選手が、練習しているような段階です。Infini-Brainに搭載したAI技術を既存のパソコンに適用できないかも検討しています。例えば、長時間の稼働が要求される消防署やコンビニエンスストアなどのロングライフパソコンへの適用などが考えられます。企業のイノベーションや人々の豊かなライフスタイルに、コンピューティングで貢献する製品・サービスをこれからも提案していきたいと考えています。

写真左が開発中のエッジAIコンピューター「Infini-Brain」(インフィニブレイン)
2019年11月に新川崎駅のオフィスビルに本社を移転した
パソコンや「QUADERNO」、「Infini-Brain」などが並ぶ新本社のロビー