Dynabookは「コンピューティングとサービスを通じて世界を変える」をビジョンに掲げる。ユーザーにどんな製品と付加価値を提供するのか。

──2020年11月に開催したイベント「dynabook Day 2020」で、ノートパソコンのラインアップを一新して発表しました。

(撮影:稲垣 純也)

 コロナ禍で人々の働き方や生活が大きく変わりました。こうした状況の中、コンピューティングとクラウドサービスを組み合わせ、ニューノーマル時代に求められる新たな付加価値を提案しています。

 コンピューティングでは、小型軽量でありながら長時間のバッテリー駆動ができて性能も高いといった当社の強みである「軽薄短小」技術を進化させています。例えば、ファンと熱を伝えるヒートパイプをそれぞれ2つ搭載することにより、CPUが安定して高い性能を発揮できるようになりました。また、高密度実装基板の設計技術により、バッテリー容量を拡大するなど、従来に比べ、より薄く、軽く、それでいてバッテリー駆動時間が長いモデルを開発しました。

──新製品のラインアップは高性能なモデルが中心ですが、低価格モデルは出さないのですか。

 かつては欧米市場向けに、手ごろな価格帯のエントリーモデルを提供していました。しかし、価格競争が激しいエントリーモデルでは利益が出ず、強みを発揮できる高性能・高機能モデルにシフトしてきた経緯があります。ただ、海外向けや国内の文教市場向けではエントリーモデルのニーズも高いため、製品化を検討しているところです。

 文教市場に対しては、タブレット端末としてもノートパソコンとしても使える10.1型の2in1パソコン「dynabook Kシリーズ」を提供しています。GIGAスクール構想で進める1人1台の端末整備計画の前倒しもあり、予想以上の受注を獲得しています。

──GIGAスクール構想で整備される端末の中で、Chromebookが4割程度のシェアを握るという観測があります。Chromebookを手掛ける可能性は?

(撮影:稲垣 純也)

 確かに、Chromebookを採用する自治体は多いようです。当社ではこれまでWindowsパソコンを提供してきましたが、今後、Chromebookを出さないと決めているわけでもありません。当社の軽薄短小技術は、Chromebookにも生かせるのではないかと思います。

──覚道社長は、就任当初からサービス事業の拡大を図ると話していました。具体的にはどんな事業展開が考えられますか。

 法人向けパソコンの出荷は、今のところ堅調に推移していますが、いずれ販売が頭打ちになる踊り場が来るとみています。そのため、ハードウエアだけでなく、クラウドサービスを組み合わせ、新たな働き方やライフスタイルに向けた付加価値を提案していきます。

 パソコンメーカーとして長年培ってきたコンピューティング技術と、企業のICT環境構築などを支援してきたノウハウを活用し、マイクロソフトの「Azure」上に当社のクラウドサービス基盤「Dynabookクラウドプラットフォーム&クラウドサービス」を展開しています。

 具体的には、例えば「dynaTeamsかんたんテレワークスターターパック」は、「Microsoft 365」のライセンスをはじめ、パソコンの初期設定の簡略化や働き方の可視化といったサービスがあり、ニューノーマル時代に必要なテレワーク環境をクラウドで提供します。

──シャープグループに入って2年がたちました。相乗効果は出ていますか。

 例えば、ヘルスケア・医療分野のオンライン診療サービスなどでの応用が見込める8K映像の分野で「8K映像編集PCシステム」を発売しました。シャープは8Kカメラなどの入力部分と8Kテレビなどの出力部分は持っていますが、その間にある映像編集の部分が手薄でした。8K映像編集PCシステムは、当社のノートパソコンとGPUボックスを組み合わせ、8K映像を効率的に編集できます。映像編集はニッチな市場なので爆発的に売れるというわけではありませんが、映像編集のプロダクションや専門学校などに提案していきます。

 シャープは5Gモバイル技術で強みがあります。例えば、工場や学校など地域を限定して通信できるローカル5G技術を、当社のパソコンに搭載することも検討していきます。構内ネットワークには有線LANやWi-Fiが利用されていますが、パソコン内蔵のローカル5Gがあれば、より手軽にクラウドサービスを利用できます。シャープの技術とDynabookの強みを組み合わせ、さまざまな可能性が生まれると確信しています。

※「dynabook Z95」とNVIDIAの「Quadro RTX 4000」搭載GPUボックスをセットにしたシステム。2020年8月に発表

(聞き手:江口 悦弘=日経パソコン編集長)

覚道 清文氏
社長 兼 CEO
1983年3月、東京大学法学部卒業。同年東芝に入社。東芝カナダ社社長、東芝パーソナル&クライアントソリューション社社長、東芝クライアントソリューション社長兼 CEOなどを歴任。2019年1月、Dynabookの社長兼CEOに就任した。

初出:日経パソコン2020年12月14日号