1人1台端末でデータ収集が可能に

 コンピューターを活用した授業の急速な広がりを受け、教育データの利活用とラーニングアナリティクスが注目されている。中でも小中学校では、GIGAスクール構想によって1人1台のコンピューターが整備され、児童・生徒の学習履歴や成績といった教育データの収集ができる環境が整った。それを匿名のビッグデータとして分析すれば、指導方法や教育行政を改善できると期待されている。特に、主たる教材である教科書がデジタル化されれば、全ての学年でさまざまな教科の学習活動を調べることが可能になる。

 実は、東北大学と東京書籍などは2017年から2018年にかけて東京都荒川区で同様の実証研究を実施した。そのときの成果について堀田氏は、「教科書の写真や図が拡大表示された回数によって児童がどこに注目したかといったことは分かったが、授業の内容とは関連付けていないため、分かることは限定的だった」と振り返る。仮に同じ単元の2つの授業でデジタル教科書の操作履歴に大きな差があったとしても、授業での指導内容が分からないと、差の意味までくみ取るのは難しい。

教育データ利活用の礎を築く

 今回の実証研究では指導案を作るところから関わり、授業中の教員の働きかけや児童・生徒の活動とデジタル教科書の履歴データを突き合わせ、その意味を探る。例えば、「児童・生徒が主体になる調べ学習と教員がリードする授業で、どのような違いが出るか調べる」(堀田氏)という。研究としてはまだ基礎的な段階だ。

 堀田氏は「学習履歴などの教育データは、何を収集すれば意味があるのかさえも分かっていない」と説明する。天気予報や噴火予知で言えば、予報や予知のベースになる観測データの取り方が定まっていないようなものだ。まず観測すべきデータを特定し、それに基づいてデータを集め、分析方法を確立できたら、ようやく実用になる。

 つくば市の中村氏は、「この実証研究で得られた成果がエビデンスの一つとなり、これからのデジタル教科書開発の一助になればよい」と話す。ラーニングアナリティクスなど教育データの利活用に必要な基礎データが得られるかどうか、成果が待たれる。

堀田 龍也氏
東北大学大学院 教授、東京学芸大学大学院 教授
堀田 龍也氏 東北大学大学院ラーニングアナリティクス研究センターのセンター長を務めるなど、教育データの利活用に関する研究に取り組む
中村 めぐみ氏
つくば市総合教育研究所 兼 教育指導課 情報担当指導主事
中村 めぐみ氏 つくば市のプログラミング教育やICT活用教育の推進に尽力。「教育データの利活用に関する有識者会議」の委員も務める