著作権法第35 条の改正に伴い新設された授業目的公衆送信補償金制度(以下、補償金制度)が2021年4 月から“有償化”される。補償金制度は、コロナ禍による学校休業に対応するため、2020年4月に急きょ無償でスタートしたが、2021年度からは補償金の徴収を開始する(図1)。この制度下では、学校の設置者が一定の補償金を支払うことで、授業において著作物を無許諾で公衆送信できる。

2020年末以降の主な動き
図1 授業目的公衆送信補償金制度を巡る最近の動き。SARTRASは、補償金制度の利用を申請した学校の設置者を公表する方針だ

 教育関係者の最大の懸念は補償金の額と財源だった。金額については、いずれも1 人当たりで中学校が180 円、高等学校は420円、大学は720円などに決まった。補償金制度を包括契約で利用する場合、公衆送信を利用する学習者の人数分を支払うことになる。包括契約のほかに、公衆送信を実施するたびに支払う契約も可能だ。

 小中高等学校はもちろん、大学においても著作物の利用料を予算化している例は少なく、補償金制度に対応する財源の確保が課題だった。だが、初等中等教育や公立大学などについては地方財政措置が使えるようになる見込みだ。国立大学と私立大学、高等専門学校などは国の予算に盛り込まれており、こちらも学校の設置者の負担が増えないよう配慮された。ただし、地方財政措置の使途は自治体の考え方次第だ。

運用指針で学校での典型例を提示

 教員は、学校などでの教育活動が補償金制度の対象になるのか、対象外の行為なのかといった判断をする必要がある。書籍の一部をスライドに複製し、サーバーに置いて閲覧できるようにするという典型例以外にも、「授業や教育機関の範囲はどこまでか」といった判断に迷うケースもある。

 さらに、著作権法第35条には「必要と認められる限度において」「著作権者の利益を不当に害することとなる場合は除く」という制限があり、一般の教員には解釈が難しい。このため、授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)は運用指針を公開し、初等中等教育における典型例などを示している(図2)。授業で著作物を適切に利用するためには、補償金制度の正しい理解が必要だ。一方、SARTRASには運用指針の公開にとどまらず、補償金制度について広く分かりやすく説明していくことが求められる。

教員にとって運用指針は必読
図2 2021年度版の運用指針では、どのような場合に補償金制度の対象になるか、具体的な事例を示しつつ解説している(出所:「改正著作権法第35条運用指針」)

初出:2021年1月19日発行「日経パソコン 教育とICT No.15」