国立情報学研究所(NII)が主催する「教育機関DXシンポ」が初めてメタバースで開催された。同シンポジウムは2020年3月から定期的に開催され、2022年1月14日に45回目が開催された。通常は「Webex」を使ったオンライン配信だが、今回は仮想空間プラットフォーム上のメタバースで講演や議論が展開された。メタバースの構築と提供には、オープンソースのVRプラットフォーム「Hubs」(Mozilla)とメタバースプラットフォームの「cluster」(クラスター)を使用した。

「Hubs」に用意されたルームに入るとカフェテリアがある。ここを抜けた広場に大型スクリーンがある。参加者(聴講者)はキーボードやマウスの操作で仮想空間内を動き回れる。VRゴーグルでの参加も可能だった
「Hubs」に用意されたルームに入るとカフェテリアがある。ここを抜けた広場に大型スクリーンがある。参加者(聴講者)はキーボードやマウスの操作で仮想空間内を動き回れる。VRゴーグルでの参加も可能だった
[画像のクリックで拡大表示]
広場には大型スクリーンが設置され、そこにメタバース内で講演する登壇者とその発表スライドが表示されている。アバターはシンポジウムの参加者。こうした入れ子のような構造は、参加者を戸惑わせたのではないか
広場には大型スクリーンが設置され、そこにメタバース内で講演する登壇者とその発表スライドが表示されている。アバターはシンポジウムの参加者。こうした入れ子のような構造は、参加者を戸惑わせたのではないか
[画像のクリックで拡大表示]

 同シンポジウムの参加者は、Hubsにアクセスして専用の仮想空間に入る。広場に出ると大きなスクリーンが設置されている。ちょうど野外ステージのような構成で、参加者(聴講者)は大型スクリーンの前で講演などを見る。さらに今回は、別に用意されたメタバースの中で東京大学総長の藤井輝夫氏が講演し、続いて学生・卒業生と対話した。つまり、参加者は仮想空間に入った状態で、講演の様子が映し出されたスクリーンを見るという、入れ子のような仕組みだ。

メタバース内で登壇者のアバターが対話する様子。参加型のイベントであればメタバースのメリットはありそう。ただし、それを仮想空間のスクリーンで視聴することに意味はない
メタバース内で登壇者のアバターが対話する様子。参加型のイベントであればメタバースのメリットはありそう。ただし、それを仮想空間のスクリーンで視聴することに意味はない
[画像のクリックで拡大表示]

 藤井氏の講演の後は、九州大学 附属図書館付設教材開発センター長の岡田義広氏による「九州大学におけるVR系教材の開発事例」、国立教育政策研究所 高等教育研究部副部長・総括研究官の濱中義隆氏による「全国大学教員調査にみるオンライン授業の実態」などの発表があった。

登壇者のアバターが仮想スクリーンをレーザーポインターで指し示しながら発表する様子。これが仮想空間内のスクリーンに投映されるため、発表スライドの表示が小さ過ぎて判読できなかった。また、仮想空間内では音声が途切れる不具合が長時間にわたり解消しなかった
登壇者のアバターが仮想スクリーンをレーザーポインターで指し示しながら発表する様子。これが仮想空間内のスクリーンに投映されるため、発表スライドの表示が小さ過ぎて判読できなかった。また、仮想空間内では音声が途切れる不具合が長時間にわたり解消しなかった
[画像のクリックで拡大表示]

 今回の試みは野心的だが、仮想空間では音声が途切れ途切れになって大部分が聞き取れないという致命的な不具合があった。しかも、スクリーンに投映されるスライドが見づらく、参加者からは不満が出ていた。メタバースと仮想空間を組み合わせた構造はやや分かりにくく、仮想空間で視聴するメリットもあまり感じられなかった。その一方、複数の人がアバターとして参加して議論するメタバースには、従来型のオンラインミーティングにはない臨場感がある。使い方次第ではオンラインでも活発な議論ができるようになる可能性はある。