
1人1台のコンピューター端末と校内ネットワークを整備する「GIGAスクール構想」や新型コロナウイルス感染症への対応などで、教育現場のICT活用が急速に広がりつつある。
日経BPは、「これからの子供たちのためのICT活用教育」をテーマにした、3回シリーズの座談会を企画。第1回は、2020年12月4日に「デジタル教材とEdTechの活用」について議論した。
この企画では、各界の有識者に「オピニオンリーダー」に就任いただき、座談会で議論した内容についてオピニオン(意見、提言)を寄稿いただいている。第1回の座談会のオピニオンをご紹介しよう。

今こそICT活用のギアを上げ、叡智を結集してモデル事例を創るとき

ICT教育の最前線で活躍されるとともに、このたび時代を先取りする活発な論議を展開されたキーパーソンの皆さまに対し、敬意を表します。
Society5.0 時代の先導役となる人材を育成するためには、ICT のフル活用を通じ、「児童生徒の自主性」を引き出し、「教科横断的な学び」を実現していくことが喫緊の課題であるという皆さまのご意見やご提言に私も強く共感しております。
現在、全国知事会は国と心を一つに、GIGAスクール構想を強力に推進しており、「個別最適化された学び」の環境整備は急速に進んでいます。
今こそ、教育関係者がもう一段二段とギアを上げ、最新環境を徹底的に使いこなすべく、叡智を結集して多くのモデル事例を創り、迅速に発信していくことが不可欠です。
徳島県としても、「未知の世界に果敢に挑戦する人材の育成」に向け、「小中高一貫のタブレット端末」の戦略的活用をはじめ、徳島ならではの創意工夫を凝らして参ります。
パソコンやデジタル教材を活用してどのような授業をするかは先生の気付き次第

さまざまな分野でイノベーションが進む社会では、ICTの知識や技術の習得だけでなく、それを活かして地域課題の解決や産業におけるイノベーションにつなげられる「デジタル人材」の育成が必要だと考えます。
私が知事に就任した時には、1人1台パソコンを全国で最初に導入することが目的化されていましたが、パソコンやデジタル教材は、教育環境を充実させるためのツールに過ぎず、教育の質を上げていくには、それをいかにして使いこなすかが大切であると言い続けてきました。
例えば、2021年から佐賀県では、クリエィテイブ、アート、テクノロジー、ビジネスなど、いま必要とされるジャンルを網羅した「弘道館2」というデジタル教材を導入します。
今後、この教材を活用してどのような授業をするかは先生の気付き次第。これをチャンスと捉えてイノベーションの視点を持った教育に取り組んでほしいと考えています。
※弘道館2のWebページ:https://www.kodokan2.jp/main/
「教えから学びへの転換」を教育の柱に据え、問いから始める学びを目指す

五十嵐立青氏
つくば市では、2020年3月に新たに教育大綱を作成しました。この教育大綱は、「一人ひとりが幸せな人生を送ること」を最上位目標とし、教えから学びへの転換を教育の柱に据え、個別・双方向の学びを進めること、教師が子供と向き合う時間を増やすためICT機器を効果的に導入すること、子供だけでなく教師自身が問い続け、成長を続けるため支援を行うことなどを定めました。
教えから学びへの転換に関する具体的事例として、当市では、新型コロナウイルスへの対応のための全国一斉休校時、新たな学びに挑戦する機会として、自由研究をオンラインで市内の研究者や司書に相談できる企画を実施しました。官民の研究機関が集積する当市の特徴を生かしたSTEAM教育の取り組みは2018年度から始まり、一人ひとりの思いや興味に寄り添い、自分なりの問いを徹底的に考え抜く力を育むことを目標とし、科学者と子供たちがアイデアを交換し育むためのプラットフォームを築いてきました。
ICT機器を活用することにより、一人ひとりの学びに合わせた教育への転換が可能な時代となっています。この実現には、教師や学校、教育委員会だけでなく、幅広い関係者が意見交換を重ね、導入だけでなく活用の目的や具体的方策についても理解を深めていくことが重要と考えます。