学校現場での研究と実践の積み上げ、教員の指導力の向上がカギ

京都市長 門川大作氏

 GIGAスクール構想に基づく1人1台PC端末の整備とその効果的な活用は、これからのSociety5.0と言われる時代に生きる子供たちの、学校での学びを社会生活に繋げるために大変重要であると認識しています。そのため、学校現場での研究と実践の積み上げ、教員の指導力の向上が鍵となりますが、指導力の格差を新たな教育格差に決して繋げてはなりません。

 本市では、個別最適化された学びの実現に向け、現在小・中学校約50校のモデル校で「授業支援ソフト」等の活用・検証を進め、新たなクラウドサービスの操作方法や実践事例を紹介する教員研修を充実させるとともに、ICT活用による新たな学びの構築、より質の高い教育実践とするため、大学・企業等とも連携・協働した取り組みも進めています。一方で、PC端末の保守・更新費等は国庫補助がなく、自治体財政、家庭の経済力に左右されない教育環境の確保に向け、切れ目のない支援も国にお願いしたいと考えています。

新時代の学校にふさわしい教師の役割とは何か、答えを見つけていく必要がある

熊本市教育委員会教育長
遠藤洋路氏


 学校で使う筆記用具は、和紙・毛筆(江戸時代)→石板・石筆(明治時代)→ノート・鉛筆(大正時代以降)と変遷してきました。1人1台端末の普及で、100年ぶりに「板」(tablet)に記録する時代を迎えますが、今度の板は、世界の人や情報とつながっているという点で革命的です。さらに、筆記具だけでなく、教科書、問題集、資料集、参考書などの機能も果たします。

 もちろん、この「板」を使わなくても勉強はできますが、使った方が学びの幅が広がることは間違いありません。特に、主体的・対話的で深い学びという新学習指導要領が示す学習の方向性を実現するには、非常に適した道具です。どんな活用ができるのか、私たちの想像力の限界が活用の限界になるといえます。したがって、多様なEdTechの開発と活用を積み重ねることで、子供たちの学びをさらに豊かなものにすることが私たち大人の責任だと考えます。

 ただ、この「板」は、教科書やノートの役割だけでなく、教師の役割も兼ねてしまうのでは?という疑問も浮かびます。新時代の学校にふさわしい教師の役割とは何か、私たち教育関係者一人ひとりが考え、答えを見つけていく必要があると考えます。

教員のICT活用指導力を向上させていくことが大切

大阪教育大学理事・事務局長
新津勝二氏


 GIGAスクール構想により2021年度から1人1台端末の環境が整備されることを、元文部科学省情報教育振興室長としてもとても嬉しく感じています。第1回座談会は、すでに1人1台端末が整備された先進校を想定した内容でしたが、デジタル教材等がそのデータ活用も含めて有効であるということは言うまでもありません。

 しかし、その前提として解決しなければならない大きな課題が残されています。ICT環境整備が遅れていた学校(いわゆるステージ1の段階)が、ステージを二つ飛ばしていきなりステージ4になることの対応です。特に教員のICT活用指導力を向上させることが喫緊の課題となっていて、得意な先生だけではなく、全ての先生がICTを効果的な場面で普段使いできるようにしなければなりません。この点について藏下先生の発表にもありましたが、生徒側からもっと使いたいという意見が出るようにすることがヒントになります。

 小中学生を対象にしたプレゼンテーション大会を毎年実施している自治体の学校からは、大会への出場を目指す子供たちがより積極的に授業を受けるようになり「もっとパソコンを使った勉強をしたい」「プレゼンをもっとうまくなりたい」という声を上げて、先生方がICTを活用せざるをえない状況になったという事例が報告されています。また、本学においても、デジタル教科書を半年間研究した4回生が、ICTを活用した模擬授業を見事に行っています。デジタルネイティブである子供たちと一緒に先生方も道具として普段使いを続ければ、短期間でICT活用指導力は向上すると思います。便利な道具をフル活用して働き方改革も是非実現していただきたいです。

ICTとの相性が良い「音楽科」のデジタル教材やEdTechサービスの整備を

獨協埼玉中学高等学校
非常勤講師 相原結氏


 私は私立中高で「音楽科」を担当しています。座談会での議論で何度も「art」を含んだSTEAM教育への言及がありました。こういう場で芸術が注目されることを嬉しく思いました。音と記号(楽譜)を扱うことから、音楽科はICTとの相性がとても良い教科です。

 2019年度は、校内のWindowsパソコンと無料の楽譜作成ソフト「Muse Score」を使って、中高で創作(作曲)の授業を実施しました。このソフトを使えば、マウス操作で楽譜上に音符を配置するだけで楽譜が完成し、ボタン一つで曲を再生できます。楽譜や演奏が苦手な生徒も含めて全員が作曲でき、とても喜んでいました。私自身、デジタル教材の効果と可能性を実感しました。

 2020年度になって、本校では生徒全員にChromebookを導入しました。Muse Scoreは、Chromebookに対応していないため、前年度と同様の授業ができなくなりました。現在は、Webブラウザーで利用できるサービスで創作活動ができないか模索中です。

 OSが変わると今まで使っていたソフトが使えなくなってしまうということは、今後のICT活用に向けて、大きな課題と感じています。こうした課題を乗り越えて今後、音楽科のデジタル教材やEdTechサービスがもっと整備されていくことを楽しみにしたいと思います。