過剰規制を見直して、「情報共有ツール」の活用を

千葉大学教育学部附属小学校
教諭
ICT活用教育 兼 校務ICT化実行委員会 主任
小池翔太氏


 座談会で紹介された理念や教材が大変素晴らしく、日々の実践の参考にしたいと感じました。他方、全ての学校現場への普及を目指すならば、教科書が用意される形で教育課程に位置付けるなど、超えるべきハードルは相当あるとも感じました。もちろん、さまざまな現場での地道な実践と、その必要性を提言する社会運動が、今まさに必要だということは理解しています。

 こうした厳しい現状の中で、GIGAスクール構想が始まります。座談会の終盤では、教員のマインドセットをどう変えるかが論点として挙がりました。まず優先されるべきは、「情報共有ツール」(マイクロソフトの「Teams」やグーグルの「Classroom」、「ロイロノート」「スクールタクト」等)を、学習者が日常的に活用できるようになることです。教科等の学習内容に関わらず、学校の生活で必要不可欠なツールとして馴染むことが目指されるべきです。

 コロナ禍の一斉休校期間中、多くの学校は情報共有ツールを活用できませんでした。まず教室での活用の機会の確保に向け、自治体や管理職は過剰規制をしていないか、今すぐ見直すべきです。そして教員は「ネットトラブルで生活指導が増える」などと臆してはいけません。「転ばぬ先の杖」よりも「転んだ先の支え」になるつもりで、学習者の失敗も含めて学びが成立すると捉えるべきです。

 全ての教員がこうしたマインドセットを持った先に、デジタル教材やEdTech活用の可能性が見えてくるのではないでしょうか。

一斉授業の画一的な学びから、個別最適化された学びがスタンダードに

東京都立三鷹中等教育学校
主幹教諭 能城茂雄氏


 三鷹中等教育学校では、平成28年度(2016年)より、東京都教育委員会の研究指定により1人1台のタブレットPCを活用した実証実験を行っており、全ての教科がICTを活用した授業を実践してきました。デジタル教材の活用についても教育用SNS、授業支援アプリなどを活用し、これまで教員が培ってきたノウハウと、ICTを活用した学びの融合について試行錯誤を繰り返してきました。これからの学びは、ICTの活用・データの活用が必須となる時代になることは明確であり、従来から行われてきた一斉授業・講義スタイルを中心とした画一的な学びから、個別最適化された個に応じた学びがスタンダードになっていくことが考えられます。

 そのため、私たちはSociety5.0に向けた人材を育成していくために、ICTを活用した学びの効果が最大となるように、さまざまな制度、環境を利用し生徒を育てていくことが重要であると思います。

ICT活用を、一時的な代替ではなく課題解決手段に

滋賀県立米原高等学校
英語科教諭 堀尾美央氏


 日本の今後の教育に関しまして、大変興味深く伺いました。特に、経済産業省が開発を進めておられるSTEAM Libraryのお話は、聞いているだけでワクワクしました。

 現状では、多くの学校現場では、このようなEdTechが持つ可能性はまだあまり知られていないように感じています。2020年3月に休校要請が出された後、「オンライン授業」「ICT活用」という言葉が急速に広まりましたが、休校が明けて半年以上たった今では、残念ながら現場の意識は以前に戻りつつあると感じています。あくまで、対面授業の代替手段としての認知に留まってしまったことが一因だと考えられます。

 ここから更に一歩進むには、EdTechで何が可能になるのかと、学校現場の課題や「欲」を繋げていく必要があると思います。普段の校務や授業で、何かをしたいと思っても、さまざまな理由から実現が難しいこともあります。それを解決できるのがEdTechです。2020年、米国の黒人差別問題が話題になっていた時、首都圏の私立高校にコンテンツをシェアしてもらい、遠隔の協働授業を実施したのですが、地方公立高の生徒と首都圏の私立高の生徒が普段の授業で学び合うなんて、以前はなかなか考えられませんでした。オンラインだからこそできたことです。

 休校期間中も「授業がしたいけれど学校に来られない、じゃあZoomを使おう」となりましたが、一時的な代替ではなく、1つの課題解決手段として広く考えること、それがICT活用を進める突破口になるのではないでしょうか。