文部科学省は2021年1月27日、今後の学校教育の柱となる学習者用デジタル教科書について検討を進める「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」の第8回会合を開いた。

 文部科学省からは「学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン」の改訂案が提示された。2019年4月に施行された「学校教育法等の一部を改正する法律」により、学習者用デジタル教科書が制度化された。これを受け、その効果的な活用や導入の留意点に関するガイドラインを2018年12月に公開している。

 今回提示されたのはこのガイドラインの改定。新型コロナウイルス感染症対策によるオンライン授業の進展とデジタル教科書との関係などが盛り込まれた。また、これまで学習者用デジタル教科書の使用は各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととしてきた基準を撤廃する方針について解説した。これは学習者用デジタル教科書を2分の1以上使用することを義務化することではなく、必要に応じてより有効に使う措置であることを明記した。

 著作権法改正により2020年4月に開始した「授業目的公衆送信補償金制度」と学習者用デジタル教科書との関係や、授業の中で学習者用デジタル教科書の使用時間が長くなることが見込まれることから「30分に1回、20秒程度、画面から目を離して目を休めるよう指導」など、健康面に配慮した授業運営について追記した。

検討会議では、他の国々でのデジタル教科書の利用状況について報告された。韓国の教科書制度が日本に近いことから、中間まとめ(骨子案)でも事例として取り上げられている
出所:資料「諸外国におけるデジタル教科書・教材の使用状況について」

 会議の冒頭では、他の国々でのデジタル教科書やデジタル教材の使用実態が報告された。韓国、オーストラリア、デンマーク、シンガポール、米国、エストニアといったデジタル活用が進んだ国々でのデジタル教科書の利用実態が紹介された。例えば韓国では、デジタル教科書が法的根拠のある教科書として位置付けられ、2015年から全ての学校でデジタル教科書の使用が解禁され、ICTに関する講師養成研修を実施し、その受講者が地方や学校で研修を実施している。

 米国には教科書に関して国定や検定、認定の制度がなく、州ごとあるいは学区のガイドラインに沿っているかどうかで選定・採択される。公立学校ではデジタル教科書を無償で利用できる。2015年時点で80%の初等中等学校でデジタル教科書を含むデジタルコンテンツを利用しており、41%は教室内で利用していたという。全米の97%の学校に光ファイバーが引かれ、88%に無線LAN環境が整備されている(2017年)。国ごとにデジタル教科書の制度や利用状況は大きく異なるが、日本では教育現場のニーズに合ったデジタル教科書の活用が重要としている。

 検討会議では、中間まとめに向けた骨子案も議論された。デジタル教科書の現状を整理し、本格導入に向けて必要な取り組みや求められる機能、他のデジタル教材との連携の在り方、教員の指導力向上などについて議論した。さらに児童・生徒の健康面への配慮や、障害がある子供や、外国人の児童・生徒に対するアクセシビリティへの配慮などが記載された。

 教科書検定の在り方についても、デジタル教科書の実情に合った検討が必要とした。将来的には動画や音声などを教科書の範囲に入れることも考えられるとし、実証研究の成果も踏まえて検討を促した。学習者用デジタル教科書は、2024年度の小学校教科書の改訂に合わせて本格導入される見込み。検定は2022年度、採択は2023年度と時間の余裕がないため、検定制度の本格的な見直しは2024年度以降の検定サイクルが適当とした。

 こうした内容を受け、2021年2月22日の次回会議では中間まとめに向けた審議をする予定だ。