校長のリーダーシップで学校が変わる

堀田 町田第五小学校の取り組みを見ていると、校長のリーダーシップ次第で学校はここまで変われるのだなあと感銘を受けます。年間の授業時数を確保できていれば、公立校でも校長の権限で教育課程の編成や変更は可能です。カリキュラムマネジメントの観点から教育課程をどのように再編成するかは校長のリーダーシップにかかっています。今までのやり方を変えたくないと考える学校は山ほどあるし、教育課程を変えるなら保護者にきちんと説明しないといけないと躊躇(ちゅうちょ)する学校もあります。けれども校長がリーダーシップを発揮すれば、校長権限で教育課程を修正したり、研修や他校への講師派遣ができたりします。若い教員が育つ場を校長が作れるのです。

 日本の学校はどうしても横並びになりがちです。コロナ禍でオンライン授業に挑戦したいという教員がいても、事なかれ主義に陥って止める校長はたくさんいますが、「これはチャンスだから、どんどんやれ」という校長はほとんどいませんでした。結局、学校が変わっていくのは五十嵐先生のような校長のリーダーシップ次第なのです。

全国に先駆けて1人1台環境を整備

佐賀県 教育庁 学校教育課 教育情報化支援担当 係長 山崎哲也氏

山崎 佐賀県は全国に先駆けて1人1台環境の整備を進めてきました。

 特に県立高校では学習指導要領の改訂と高大接続改革に対応しながら、ICTを活用して生徒一人ひとりの個性や能力に応じた学習を進めるなど、「良質な学びを創造する」ことを目指しています。コロナ禍の状況を受けて、危機事象の際に学校教育がきちんと対応でき、学習機会を確保するための取り組みにも力を入れています。

 佐賀県では2011年に学校のICT活用を県の重点項目と位置付け、機器整備と人材育成、広報活動に一体で取り組んできました。まず、2011年度から一部の県立学校でタブレット端末を試験導入して検証を重ね、2014年度からは全県立高校で保護者負担により、学年進行の形で生徒1人1台のキーボード着脱式のWindowsタブレット・パソコンを整備しました。2018年度からは県費負担でリースした端末を生徒に貸し出しています。佐賀県には20の市町がありますが、GIGAスクール構想の前倒し実施により小中学校から高等学校まで全ての公立校で1人1台体制が整うことになります。

佐賀県教育庁 学校教育課 教育情報化支援担当係長の山崎哲也氏は、同県がICT活用教育で目指す姿について説明した

 こうしたICTインフラやパソコン環境を最大限に活用していくには全方位の支援や協力が必要です。そこで、「佐賀県ICT利活用教育推進協議会」を設置し、県教育長を会長に副会長を市町教育長連合会の会長が務め、県と市町の教育委員会が連携してICTによる教育の情報化を円滑に進めることとしました。また、この協議会の下に「推進チーム」の組織を設けて、選任した「ICT利活用教育推進員」が授業公開を行ったり、指導事例の提供やデジタル教材の作成を行ったりしています。このほか全ての公立学校に1人ずつ、校内の情報化業務の中心となる「ICT活用教育の推進リーダー」を置き、それぞれの学校に必要な校内研修を計画・実施してもらうなど学びのデジタル化を進めています。

 2015年度には、有識者や学校関係者、保護者代表を委員とする「ICT利活用教育の推進に関する事業改善検討委員会」を設置し、ICT教育の取り組み状況を振り返るとともに改善や検討を進めるため、各学期1回、年間3回程度の開催を続けています。

 県立高校では教科ごとの特性を生かした学習用パソコンの活用について教員同士が学び合い、授業力を向上させるため、各校の推進リーダーや教科担当者を対象にした教科別授業研修会を実施していますが、2021年度からはGIGAスクール構想で市町立小中学校でも1人1台体制が本格的に始まり、各学校の推進リーダーの役割はますます重要になることから、リーダー研修も、より充実したものにしていこうと計画を立てています。

 ほかにも、教育現場や教員のスキル向上のため、教育委員会の指導主事が1、2カ月に1回程度学校を訪問して実際の授業を見学し、指導・助言や研修の支援をしています。また、「さがすたいる」というPDFのニューズレターを全教職員にメールで配信して、学習用パソコンを活用した各教科の授業の様子や指導事例などを紹介しています。

 2020年4月には、オンライン授業を展開するための「プロジェクトE」を立ち上げました。この「E」は新型コロナ感染症の拡大に備えつつ、日常的な遠隔教育の展開を見据えた「E-learning」と、オンラインでも心に響く授業スタイルを確立する「Emotional」、オンライン授業を支える通信環境を確保する「Everywhere」を表しています。新型コロナ感染症拡大防止対策もあって、双方向のオンライン授業は県立高校の全34校が早い段階で試行を済ませ、始業式や終業式、生徒会活動や文化祭など多くの学校行事もオンラインで実施するなど、佐賀県の学校現場でのICT活用は着実に進んでいます。

佐賀県は2020年4月に、オンライン授業を推進する「プロジェクトE」を立ち上げた。コロナ禍の中、県立高校全34校で双方向のオンライン授業の体制を整えたという

全ての子供たちの学びを保障できる環境を早急に実現

文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課 課長 今井裕一氏

今井 まず文部科学省が進めているGIGAスクール構想の進捗状況について説明します。2019年度と2020年度の2度の補正予算で合計4610億円かけて、小中学校の児童・生徒1人1台端末と高等学校も含めた校内ネットワーク整備、GIGAスクールサポーターの人的な整備、災害など緊急時のオンライン学習体制の整備などを進めてきました。

文部科学省 初等中等教育局情報教育・外国語教育課課長の今井裕一氏はGIGAスクール構想の進捗状況と、同省が進める教育改革のロードマップについて説明した

 GIGAスクール構想は当初4年かけて整備する計画でしたが、災害や感染症の発生時等による学校の臨時休業等の緊急時においても、ICTを活用することで全ての子供たちの学びを保障できる環境を早急に実現するために、2020年度の1年間で前倒し実施することになりました。端末と校内ネットワークといったインフラは年度内に一気に整備されます。2020年12月時点では、ほとんどの自治体でコンピューター端末の導入事業者の選定が完了しており、年度末の2021年3月に向けて納品されていきます。校内ネットワーク整備についても2021年4月には9割以上の学校で利用できる見通しで、2021年度が始まる新学期の4月には端末とネットワーク両方の整備が完了して利用できるようになります。

 公立学校のインターネット接続には、学校から直接インターネットにつながる自治体と、学校からいったん教育委員会のセンターサーバーを経由して接続するセンター集約型の自治体があります。センター集約型では、学校からの回線が集まるセンター側のインターネット回線の帯域が細いと、複数の学校からアクセスが集中する場合に輻輳(ふくそう)が発生してインターネット利用に支障が出ることが分かっていますので、2021年4月の本格供用開始に向けて改善していきます。

 人的支援では教員のICT活用指導力を向上させるため、教員養成の段階から取り組むとともに、教員研修を強化します。従来の対面型の集合研修だけでなく、オンライン研修を実施できるようコンテンツの充実を図ります。教育の情報化に関する手引や教職員支援機構の研修用動画を公開しており、教職員支援機構の研修については2021年度に向けてオンライン研修と集合研修を組み合わせた最適な方法を検討しているところです。

 また、外部人材を活用して研修体制を充実させます。ICT活用教育アドバイザーが教員研修を実施したり授業面・指導面の助言を行ったりするほか、民間企業のICT活用に関する資料などを活用して教師向けのオンライン研修プログラムを作成していきます。これまで地方財政措置で利用されてきたICT支援員に加えて、ICT環境整備の立ち上げを支援するGIGAスクールサポーターも配置します。インフラ整備が進み、これからはいよいよICT活用に取り組んでいくことになります。

学校のICT活用を進めるため、文部科学省では外部人材を活用した支援体制にも力を入れる。これまで地方財政措置で進められてきたICT支援員に加えて、GIGAスクールサポーターやICT活用教育アドバイザーなどが学校教育を支える

 学習指導要領は、まず小学校で2020年度にプログラミング教育が必修になり、2021年度には中学校でプログラミング教育を充実します。2022年度からは高等学校で「情報I」が必履修科目になります。

 一方で学習者用デジタル教科書についても検討が進んでいます。2024年度の小学校の教科書改訂に合わせたデジタル教科書の本格的な導入を目指し準備をしているところです。教科書は4年サイクルで著作・編集作業から検定、採択等の手続きを経て児童・生徒の手元に渡ります。こうしたスケジュール等に鑑み、現在開催しているデジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議において、2020年度中に中間取りまとめを行い、2021年度夏頃には最終取りまとめをして、教科書の編集作業に入っていくことを予定しています。

 2020年12月8日に閣議決定した追加経済対策となる「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」では、取り組むべき施策としてデジタル改革で「教育、医療・福祉等におけるICT化等の一層の推進」をうたいました。その中で「義務教育段階で本年度(2020年度)中に1人1台端末環境が整備される中、高等学校段階を含む各教育段階においてICT化・オンライン化を推進し、誰ひとり取り残されることのないよう、デジタル社会にふさわしい対面指導とオンライン・遠隔教育のハイブリッドによる新しい学び方を実現していく」としました。

 具体的には「学びの保障」オンライン学習システムとして、2020年度はCBTシステムのプロトタイプ開発を進めていて、2021年度からは全国展開をしていきます。また、経済産業省と連携した学びと社会の連携促進事業としてEdTechの導入推進と「STEAMライブラリー」構築などを進めます。専門高校に関しては産業教育施設に高スペックなパソコンを整備する「スマート専門高校」を実現させます。また、GIGAスクール構想の拡充もします。2020年度の3次補正では、低所得世帯等の高等学校の生徒用のICT 端末や通信環境の円滑化に向けた整備、オンライン学習システム、障害のある生徒のための入出力支援装置などを拡充します。

 こうしたハードウエア整備と人材支援、ソフトウエアが有機的に一体になって、2021年度以降はGIGAスクール構想がより現実的に進んでいくことになります。