教員の働き方改革をICTで実現

中井 マイクロソフトは教育向けプラットフォームを提供する民間企業として、小中学校・高等学校に向けて支援を続けていきます。日常的にICTを活用していくことに業務上のメリットがあることを理解し、それを授業に活用していくことが教員のスキル向上に役立つことが分かってきています。

 例えば、豊島岡女子学園(東京都豊島区)は教員の働き方改革をICTで実現した例です。職員会議の資料を全てマイクロソフトのビデオ会議システム「Teams」で共有し、対面の会議時間を年間で90%削減し、できた時間を生徒と向き合う時間に充てています。

 教育現場では多くの業務で手書きやさまざまな紙の書類を使っていますが、職員室をペーパーレス化したり、オンライン会議を実践したりするなど、ICTを活用して校務をテンプレート化することで業務が効率化され、教職員の働き改革にもつながります。

 神奈川県立希望ヶ丘高等学校は、まず教員がペーパーレス化に取り組んだことで生徒の学びも大きく変わったという事例です。学校での働き方改革と教員の教え方改革、子供たちの学び方改革の3つはつながっているのです。

 兵庫県では教員約50人を、オンライン授業を進める「HYOGOスクールエバンジェリスト」に任命して約1年半かけて研修でICTを活用した授業の進め方などを学んでもらい、教育現場に持ち帰って周囲に広げてもらっています。

マイクロソフトは、Microsoft 365 Educationを学校で活用することで、教育現場の「働き方」「教え方」「学び方」改革を進めることを提案する

 ICTを活用した探求型学習を進めてもらうために、マイクロソフトもSTEM授業のカリキュラムを無償提供しています。例えば小学生向けには「サメはどのくらい速く泳ぐか」(45〜90分の授業)、中学生向けの「人間の動きを真似る機械の作成」(50分×6回の授業)など、探求型の深い学びができるコンテンツと授業案を提供しています。

 ほかにも米航空宇宙局(NASA)の宇宙に関して探求学習ができる「NASAコレクション」のようなコンテンツや、米カリフォルニア州の放送局KQEDと提携して開発した計算的思考力を使って地震のメカニズムを学ぶコンテンツなどの日本語化を進めています。

 ICTを活用することでどのような人材を育成できるかは非常に重要です。マイクロソフトが教育機関向けにプラットフォームを提供していくのは、1人でも多くの活躍できる人材を育てていきたいという考えがあります。

 人口減少社会に向かう日本では、母国語としての日本語に加えて、世界語である英語と中国語、問題解決能力、データと人工知能(AI)のリテラシーを備えた「AI人材」を育成していく必要があり、こうしたプログラムを提供して支援しています。既に1人1台環境が整備されている佐賀県の高校生向けに、ICT環境の一歩先について学ぶAIとクラウドのスキルに関する勉強会を2020年12月に実施し、約150人の生徒が参加してくれただけではなく、その中から数多くの生徒が実際に認定資格にも合格しています。

鈴木 この座談会で話をする中で、GIGAスクール構想と学校のICT活用の成功を確信しました。要するに47都道府県の教育委員会すべてを佐賀県のようにし、全国の公立学校すべてを町田第五小学校のようにしていけばいいのです。

 OECDの「ラーニング・ コンパス 2030:学びの羅針盤」では、未来に対峙するためAnticipation(予測)-Action(実行)-Reflection(振り返り)というAAR学習サイクルを推奨しています。

 現在進んでいる教育の情報化では未知のことに挑戦しており、必ずしも想定通りうまく進むとは限りません。プログラミングの世界ではデバッグという欠陥(バグ)を発見しては修正し、仕様に合わせていくという作業をします。最初からバグのない完全無欠のプログラムはありません。学校でプログラミングを学ぶのは、プログラムの書き方(コーディング)を教えるだけでなく、欠陥を見つけては修正していくデバッグ的な考え方を学ぶことでもあります。児童・生徒が全員プログラマーやエンジニアになるわけではありませんが、デバッグ的な考え方を身に付けることはこれからの時代を生きていく子供たちにとって極めて重要なことなのです。