ICT活用教育が盛んになる一方で、その進展度は分野によって差が生じている。一般に理数系の分野と比べると、文科系や芸術系の分野での活用は低調だ。こうした中で、川崎市にある洗足学園音楽大学では、音楽教育の分野で独自の取り組みを進めている。

 ICT活用を中心になって進めているのは、洗足学園音楽大学・大学院 作曲コース アカデミックプロデューサー 洗足オンラインスクール 校長の清水昭夫准教授だ。まずは、清水准教授が担当する「対位法」による作曲の授業を見てみよう。対位法とは、複数の旋律を重ね合わせる技法で、音楽大学での基本的な学習項目の一つになっている。

 対位法の授業では、さまざまな「基本ルール」を学び、それに従って学生が作曲するのが一般的だ。このとき教員は、学生が作った曲を一人ずつピアノで弾いて指導することが多いという。こうした授業形態だと、学生が教員の前で列になり、授業中の学生の待ち時間が生じやすい。教員としても、一人を見ているとほかの学生を見られないという難点がある。

 清水准教授の授業では、パソコンやスマートフォンで曲を入力すると、自動で採点して改善点を指摘するWebアプリを利用している。アプリは清水准教授が、対位法のルールを基にPythonを使ってプログラミングした。学生は、特定のURLのページにアクセスして、アプリを利用する。

清水昭夫准教授の「対位法」による作曲の授業。各専攻の2年生から4年生の学生が受講している
学生は課題を選んで、作った曲を画面上で楽譜に入力する
瞬時に採点結果と改善点を表示する。アプリは、宇宙人が地球の音楽を評価するという「設定」になっている
作品をスクリーンに映し出して教える清水准教授

 授業では、学生がそれぞれの端末で自分の曲を楽譜に入力。ソフトの診断結果を基に、作品の改善に取り組んでいた。その間、清水准教授が教室内を巡回し、個別指導していた。また、最高点を取った学生の作品を正面に映し出して改善点を指摘するなど、個別学習と集団学習を組み合わせながら授業を進めていた。授業を受けていた学生からは、「並んで待たなくても結果がすぐに分かるので、密度が高い学習ができる」「家でも復習ができる」「修正すべき点を指摘してくれるので、作曲の方針を立てられる」と好意的なコメントがあった。