政府が進める「GIGAスクール構想」の実現に向けて、2020年2月14日、萩生田光一文部科学大臣と民間企業・団体と意見交換をする場が設けられた。2019年12月5日に閣議決定され公表したGIGAスクール構想は、高速な校内ネットワーク環境(校内LAN)を整備し、全ての小中学生が各自のパソコンやタブレット端末を使えるようにする政策。授業などでこれまで以上にコンピューターの利用を進め、教員のスキルを向上させることで教育現場のICT活用を一気に進める狙いがある。

 萩生田文科相は冒頭のあいさつで、世界の他の国と比較すると日本の教育現場でICT導入や活用が遅れていることを認め、「今こそ国を挙げて小中学校の生徒1人1台の端末を整備し、それを令和の時代のスタンダードにするため今回の政策を進めることにした。文科省だけでなく政府全体で進めていく」と、GIGAスクール構想の狙いを話した。

事業者を前にGIGAスクール構想への協力を求める萩生田光一文部科学大臣

小中学校に在籍する児童・生徒数は約930万人。1人1台環境の実現には、配備済みの端末を除くと700万台以上の新規導入が必要となり、端末や電源キャビネット、校内ネットワーク環境などの導入で、新しい巨大ICT市場が創設される。予算規模は2019年度の補正予算案だけでも2318億円と、文教関係としては異例に大きい。端末整備では、1台当たり4万5000円までを国が補助し、2023年度までに小中学校の生徒1人1台の環境を整備することを目標としている。巨大市場が一気に誕生するだけに期待は大きいが、政府の要求を満たす端末の提供や短期間でのネットワーク環境の整備、導入後の支援や更新など、実現に向けて乗り越えるべきハードルは高い。

 今回の官民の意見交換会に参加したのは、パソコンメーカー、CPUベンダー、ソフトウエアベンダー、販売事業者、通信事業者、関連業界団体など29社8団体。官庁からは文部科学省幹部に加え、内閣官房、総務省、経済産業省の担当者が出席した。

意見交換会に出席したのは、NEC、富士通、アップル、日本HP、インテル、日本AMDなどのハードウエアメーカー、OSやクラウドサービスを提供する日本マイクロソフト、グーグル、アップル、通信事業者のNTT、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、販売事業者の大塚商会や内田洋行など29社8団体

 萩生田文科相は「まずは今回の補正予算でハードウエアを円滑に整備していくことが極めて重要。適切なスペックや価格での端末の安定供給と保守管理が必要だ。これまでにない規模の端末の大量供給が求められる。世界規模での供給を求めることを検討していきたい」と、学習者用コンピューターの低価格での提供と、必要最小限の保守管理による低コスト化を求めた。これに対して出席したメーカーや事業者などからは、「大量の端末生産に必要なCPUや部材を調達するため、自治体からの透明性の高い配備予測などの情報が必要だ」との声が挙がった。

 校内ネットワーク整備に関しては、「大規模工事で一気に整備を進めるのではなく、週末や休み期間中などの空き時間を活用して、現実的な工夫をしていきたい」と話した。整備後の安定した通信に向けては、地元の業者による保守管理を想定し、地域活性化にも貢献したいという。学校外での通信環境の確保に向けては、高速大容量で低料金での提供を通信事業者に求めた。光ファイバー回線の提供外の地域でも、学校で通信が本格的に活用されるようになれば、新しい市場が生まれることになるため、積極的な敷設を期待した。これに関連して、出席した楽天モバイルからは「光ファイバー敷設が必要な基地局整備に学校が協力してくれれば、校内での通信は無償提供する」という提案があった。

 萩生田文科相は、学校現場ではICT活用に向けて戸惑いがあることも認めた。「まずは無償アプリから始まったとしても、(教育現場でICTの)活用が進めばデジタル教科書やさまざまなコンテンツ、クラウド環境が必要になる。教師が使いやすいサービスの開発・提供を業界を挙げてお願いしたい」と求めた。

 1人1台の端末整備が実現した後の更新については、「国費での整備にこだわらず、BYOD(Bring Your Own Device: 個人所有の端末の持ち込み利用)も検討すべきではないか」という意見も出た。こうした意見を受けて萩生田文科相は、各事業者はビジネス上では競合関係にあっても、学校の情報化に関しては企業と国がチームとなって、GIGAスクール構想を実現していきたいと決意を表し、出席者の協力を求めた。