私立学校でも、公立学校並みのICT活用研修を

獨協埼玉中学高等学校
非常勤講師 相原結氏


 本校のICT活用は、2020年度に急速に進みました。1人1台の端末を導入し、なんとか新型コロナウイルス感染症による学校休業に備えることができました。突然のオンライン授業には、学校中が戸惑い、不安を感じました。こうした中、教員同士が手探りで教え合い協力し合って、授業配信を実現しました。

 座談会の中で先生方が何度もおっしゃっていた「とにかく使ってみる」という第一歩を、多くの教員が踏み出すのに、学校休業が契機になったと思います。

 授業の際には、校内ネットワークにつながる校務用パソコンを使っています。ただ、非常勤講師のパソコンは共用で1人1台ではありません。このため、オンラインの共有フォルダ—にデータを保存し、教員用と私物のパソコンを併用しながら教材を準備しています。私物のパソコンは校内ネットワークにつながらないため、校内で教材の準備をする時は、スマートフォンのテザリングを使います。こうした非常勤講師のICT環境の問題は、多くの学校にあるのではないでしょうか。

 座談会で紹介があった佐賀県立高校での教員研修や教員向けのサポートは、とても羨ましく思いました。公立と比べると、私立学校の多くには、組織的な研修体制がありません。ICT活用に関心のない教員の背中を押すために、私立学校でも公立学校並みのICT活用研修を実現する必要があると考えます。

統合型校務支援システムの整備を促し、教職員の働き方改革も同時に進める

大阪教育大学理事・事務局長
新津勝二氏


 今回のGIGAスクール構想では、1人1台端末と校内ネットワーク整備、GIGAスクールサポーターの人的整備などが補助の対象になっていますが、統合型校務支援システムはその対象になっていません。日本マイクロソフトの中井さんの発表にもあったとおり、教職員の働き方改革を同時に進めるためにも、ICT環境整備の基盤である「統合型校務支援システム」(または校務のテンプレート化など)の整備状況についてあらためて確認を行い、整備予定のない自治体(学校)へは整備を促すべきだと思います。(2019(令和元)年度の実態調査の結果は全国平均64.8%が整備済)

 町田第五小学校の五十嵐校長先生から意見のあった、教員養成の段階から授業におけるICT活用を学ぶことについては、文部科学省関係三課長から2020年10月5日付で教員養成系大学に通知が出され、また、中教審教員養成部会からはICT指導の科目を2022(令和4)年度にも新設することが検討されています。この点に関連して、佐賀県教育委員会では以前から「ICTを活用した模擬授業」を教員採用試験に課していますが、全国の学校で喫緊の課題になっている教員のICT活用指導力を向上させるために、他の都道府県における教員採用試験でも同様の措置を講ずることが必要ではないかと考えています。

教育ICT活用の目的は「子供が主役になる授業」の実現。自らの人生を自ら決める子供を育む

熊本市教育委員会教育長
遠藤洋路氏


 教育現場のICT活用のためにまず大切なのは、目標の共有だと考えます。何のためにICTを使うのかという認識を、教員、児童・生徒、保護者、行政が共有できていれば、そのために必要な手段(環境、スキル、使い方、支援体制など)がブレることなく、スムーズな運用や工夫・改善が可能になります。

 熊本市では、教育ICT活用の目的を「子供が主役になる授業」の実現としています。自ら考え行動する経験を学校で繰り返し積むことで、自らの人生を自ら決める、流行りの言い方をすれば「生殺与奪の権を他人に握らせない」ための力と意思を育むのです。さらに、全ての人がそのような人生を送れる社会を創ることが、私たち一人ひとりの責任だと考えます。

 こうした大きな理念のための学校改革であり、その一環としての授業改善とICT導入であるということを、研修や文書などを通じて繰り返し共有しています。もちろん、「子供が主役になる授業」はICTがなくてもできますが、ICTを活用することで劇的に容易かつ多様なものとなります。

 こうした考え方に立てば、ICT活用の主役は教員ではなく子供であり、子供が活用しやすい環境が重要であること、また教員が完璧にマスターしようと気負う必要もないことがわかります。教員に必要なICTスキルの本質は、子供に「任せるスキル」だといえるでしょう。