インテルは、2021年の注力ポイントとしてxPU戦略の推進や教育・ビジネス分野でのデータ活用などを掲げる。

──GIGAスクール構想の前倒しで児童・生徒に1人1台のコンピューターが整備されます。どう感じていますか。

(撮影:丸毛 透)
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 販売面だけでなく、パソコン業界にとって非常に良かったと感じています。スマートフォンやタブレットしか触ったことのなかった子供たちがパソコンに触れ、スピーディーな動作などを体感することで、子供から大人までパソコンの価値が見直されるきっかけになったのではないでしょうか。

 ニワトリと卵の関係ではありませんが、パソコンを利用する人たちの裾野が広がることにより、便利なアプリケーションやサービスが出てきます。パソコン市場が今後も成長すると見込まれれば、新たな投資をする会社が出てくるといった好循環が生まれます。データを活用するスマート社会に向けて、これからもパソコンの持つ価値が貢献していくと考えています。

 パソコンのさらなる価値向上が求められる中、「インテルEvoプラットフォーム」を発表しました。第11世代インテルCoreプロセッサーファミリーとIris Xeグラフィックスを搭載したノートパソコンによって、これまでのパソコンとは異なる体験を提供します。

──アップルの「MacBook Air」に搭載されたARMベースのCPU、M1チップが評判です。インテルはどのように対抗していきますか。

 ロードマップでは次期CPUやGPUを発表しており、どんな競合に対しても、世界最高水準のパフォーマンスを発揮できる製品を継続的に市場に投入していきます。

 グラフィックスではディスクリートGPUが2021年後半に登場予定です。当社はイノベーションの柱の一つとして、xPU戦略をさらに推進することを掲げています。クラウドコンピューティングやエッジコンピューティング、AI、IoTといった分散コンピューティング環境に必要なCPUやGPU、FPGA、ASICなどを用意しています。

──ライバルが5nm(ナノメートル)の製造プロセスで生産している一方、インテルの7nmプロセスは製品化が遅れています。

(撮影:丸毛 透)
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 7nmプロセスの製品投入の時期を明言してはいません。CPUは現行の10nmで十分な性能を発揮しており、多くの需要があります。数字だけで10nmだから7nmに負けているという表現をしたことはありませんが、当社のプライドをかけて微細化技術は今後とも追求していきます。

──米国では一部の製品を外部に製造委託するという話もありました。半導体の設計と製造を切り離すことは検討していないのですか。

 これまで、外部のファウンドリー(工場)に製品の生産を委託することなく、全ての製品を自社で生産するとは言っていません。設計・開発プロセスでの技術の優位性を確保し、中心であるCPUは自社の製造技術に磨きをかけることを含め、自社で生産を続けていきます。一方で、それ以外の周辺部分の生産を必要に応じて外部に出していくことも選択肢になると思います。

──2021年の取り組みとして、教育にも力を入れていくようですが、どんな思いがあるのですか。

 日本の学校教育は諸外国に比べ、IT化が遅れているという危機感を持っています。教育に必要な好奇心を育てるためにもITは役立ちます。そうした思いから、科学・技術・工学・芸術・数学の5つの領域を対象にしたSTEAM教育に貢献するため、自治体と連携してSTEAMラボの導入を進めています。

 まず、東京にあるインテル本社内にラボを開設し、パソコンをはじめ最新のIT機器を利用して子供たちや先生がSTEAMに関わる実験や、AIやIoTなどが体験できる環境づくりを進めています。子供たちをサポートするインストラクターの育成を含め、次世代の教育を支援していきたいと思っています。

──ビジネス分野ではどうですか。

 国内産業は、以前に比べ世界でリードする分野が少なくなりました。しかし、復活するチャンスはあります。ポイントはデータの活用です。データを活用してビジネスを成長させる企業と、そうではない企業との格差、「データデバイド」が起きています。

 こうした問題を解決するためにも、データを中心にしたトランスフォーメーション、「DcX」が重要です。インテルならではの中立的な立場を生かしながら、企業同士をマッチングさせ、それぞれが持つデータを活用する環境づくりなどを通じ、新たな体験や価値を提案していきます。

(聞き手:江口 悦弘=日経パソコン編集長)

鈴木 国正氏
社長
横浜国立大学卒業後、ソニーに入社。ソニーグループにおいて幅広い事業に携わり、ソニーモバイルコミュニケーションズの社長兼CEOなどを務めた後、2018年11月にインテル日本法人の社長に就任した。

初出:日経パソコン2021年1月11日号