教育の質改善に期待

 教育データの利活用に対する期待値が高い一方で、そこへ至るまでの道のりが遠いことは意外に認識されていない。長らく国内のICT環境整備が遅れていたこともあり、1人1台の端末が配備されただけで教育データの収集が可能になり、個別に最適化された学習につながると考える人は多い。しかし、現実には解決すべき多くの課題がある(図3)。

個別最適化学習が普及するまでの道のりは遠い
図3 学習者が各自のコンピューターを使えるようになったからといって、個別最適化学習や授業の改善が一足飛びに実現するわけではない

 確かに、教育データ収集の基盤は整いつつある。だが、その先の道はおぼろげにしか見えていない。まず、初等中等教育では学習履歴などを記録・保存できるシステムが存在しない。大学ではLMSが普及しており、利用履歴は自動的にたまるが、初等中等ではほとんど使われていない。

 さらに、教育データの形式や扱い方が定まっていないことも問題だ。システムごとにばらばらに記録された情報は、ほかのシステムで分析したり活用したりすることが難しい。そのため、文部科学省は学習指導要領へのコード付与や教育データの標準化へ向けた取り組みを進めている。それと同時に、オンライン学習システムの開発や学習者用デジタル教科書の全面採用も決めた。

 こうした動きはあるものの、図3を見れば分かるように、教育データの利活用に必要な施策や取り組みは、まだ“ないことだらけ”の状態だ。課題を一つずつ解決し、実現へのステップを進めていく必要がある。

 一方で、教育データの利活用は、長年必要性が叫ばれているエビデンスに基づく教育や、AI(人工知能)を活用した新しい学習には不可欠な要素だ。社会ではデータを活用してビジネスを成長させる企業と、それができない企業との格差が広がりつつある。教育分野においても同様に、データを基にしたICT活用教育を進める諸外国に後れを取っているのが日本の現状だ。次回からは、教育データ利活用の課題と最新の取り組み状況を詳しく解説する。

初出:2021年1月19日発行「日経パソコン 教育とICT No.15」