利活用にデータ標準化は必須

 もう一つ標準化が必要なのは、記録する内容だ。例えば学習履歴なら、「AさんがBという教科書を開いた」「AさんはCというドリルでDという問題を解いた」といった具合に、誰が何をしたのかを記録する。その際、学習者が誰なのかを識別するIDや、教科書のどの部分を学習したのか識別するためのコード、さらに「何をした」に当たる動詞の定義などの事項を決めておく必要がある。学習者にどのようなIDを振るのかは、まだ議論の最中だ。IDにマイナンバーを使うという噂もあるが、関係者は否定している。一方、教科書へのコード付与はもっと単純な話で、すでに「教育データ標準」として公開されている。

 こちらは、xAPIやCaliper Analyticsとは異なり、他国に合わせる必然性はない。「何を記録するのかは、国内の実情に合わせたジャパンプロファイルを決めればよい」(放送大学の山田氏)。ただし、これをきちんと定義し、自治体や教育サービスのベンダーが標準形式に合わせて記録しないと、自治体間でのデータ比較などが困難になる。

国のシステムが実質的な標準か

 あまり知られていないが、国は教育データの利活用に向けて動きだしている。文部科学省が作ったCBTシステム「MEXCBT(メクビット)」は、2021年1月から300校が参加して試行を開始した(図3)。これは年度内に終了するが、2021年度は全国に展開する予定だ。参加を希望する自治体はMEXCBTを利用してオンラインのテストを実施し、結果を受け取る。MEXCBTにはテスト結果がたまっていくので、限定的ではあるが教育データを収集できる。さらに、「LAなどの付加的な機能も加えていき、自治体間の比較くらいはできるようにしたい」(同省 学びの先端技術活用推進室)という。

文部科学省が構築した教育データの連携システムが始動
図3 文部科学省は「MEXCBT」と「学習eポータル」を開発している。学習の窓口は基本的に学習eポータルに統一したい考えだ。そうなれば、これらのシステムが採用するデータ形式が事実上の標準になるだろう

 さらに「学習eポータル」と呼ぶLMSも作っている。MEXCBTの入り口として機能するのに加え、2021年度からはLTI(LearningTools Interoperability)で教材とも連携するという。つまり、児童・生徒は学習eポータルにアクセスすると、そこをポータル(窓口)としてデジタル教科書・教材を参照したり、MEXCBTでテストを受けてフィードバックを得たりできるようになる。

※LTI:LMSから外部の教材やコンテンツにシームレスにアクセスするための規格。IMS Globalが作成

 学習eポータルを利用するかどうかは各自治体の判断によるが、文部科学省は「全国的な窓口は1つにしたい」考えだ。そのために「学習eポータルとMEXCBTは、公的なプラットフォームとして国が維持する」(同省)という。

 もし、本当に窓口が学習eポータルに一本化されたら、初等中等を対象にするクラウド型の教育コンテンツサービスは、そこに合わせていかざるを得ないだろう。保存するデータの形式にしても、学習eポータルとMEXCBTが採用したものが事実上の標準になるのではないか。「教育データの利活用に関する有識者会議」の座長を務める堀田氏は、「標準化に関する情報をキャッチアップしていくには、文部科学省のCBTシステムの動向を注視する必要がある」と指摘している。