日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)が開催した「2021年度 教育の情報化推進フォーラム」の2日目となる2022年3月12日、パネルディスカッション「情報活用能力を育成する ~全国調査、情報活用能力ベーシック、研修等をもとに~」が開催された。進行役の放送大学 教授 中川一史氏のほか、東北学院大学文学部 教授の稲垣忠氏、放送大学 客員教授の佐藤幸江氏、熊本市教育センター主任指導主事の前田康裕氏の3名がパネリストとして参加した。

左上が前田康裕氏、右上が中川一史氏、左下が佐藤幸江氏、右下が稲垣忠教授
左上が前田康裕氏、右上が中川一史氏、左下が佐藤幸江氏、右下が稲垣忠教授
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 最初に進行役の中川氏が「情報活用能力」とは何かについて語った。情報活用能力は学習指導要領の中で、言語能力、問題発見・解決能力と並んで、学習の基盤となる重要な資質能力と位置づけられている。しかし、小中学校は1人1台の端末を使うことで精いっぱいだった状況を脱したばかり。情報活用能力をどう身に付けていくのかは、多くの学校でまだ手探りの状態だ。

 そうした中で実施された「情報活用能力育成のための調査研究事業」のうち、実態調査、情報活用能力表の開発、授業の実施について報告が紹介された。

「情報活用能力の育成に関する調査」の結果報告

 最初に「情報活用能力の育成に関する調査」と題して稲垣忠教授が登壇した。この調査は日本教育工学協会(JAET)による教育の情報化認定の優良校(2019年度~2021年度11月まで)で、何が行われ、どんな課題が生じているかをアンケートで調べた。調査期間は2022年1月から2月。優良校からランダムサンプリングした学校は243校。回収率は47.3%となる。調査項目は6つあり、結果を順に紹介する。

 (1)「ICT環境の整備状況」についてはまだまだ完全ではないものの、整備はかなり進んだ。児童・生徒の端末は1人1台の整備が完了している学校は95.7%。一部保護者負担は1.7%だ。大型提示装置は全教室に常設が65.2%、普通教室のみも32.2%で、これも合計で100%近くになる。授業用の端末が全教員に渡っている学校が78.3%、一部教員の学校も含めると94.8%に達する。端末の持ち帰りはまだ進んでおらず、全学年が日常的に持ち帰っている例は34.8%ほどだった。

 (2)「情報活用能力の認知」は2019年と同じ項目で調査し、情報活用能力の指導がどの程度広がったかの変化を追った。「総則」「学習の基盤」「プログラミングのモラル」などの7つの項目を質問し「意識して指導している」を4点、「内容を理解している」を3点、「聞いたことはある」を2点、「知らない/分からない」を1点として算出している。2019年では平均が2.5点ほどで授業への展開がほとんどできてない状況だったのに対し、2022年では3.5点に上昇。意識して指導する段階までには達してないものの、認知は確実に高まってきた。どの調査項目も小学校の方がややスコアが高い傾向にある。

 (3)「カリキュラムマネジメント」の実施状況については、「自治体で体系表を用意しているか」「学校で独自に用意しているか」「年間計画に位置付けているか」などの6つのアンケート項目から傾向を探った。上記3つの項目については実施率が高い半面、子供たちの理解度を「アンケートで把握しているか」「テストで把握しているか」のスコアは低く、結果をカリキュラムにフィードバックするPDCAサイクルが完成途上であることをうかがわせる。

カリキュラムマネジメントの実施状況
カリキュラムマネジメントの実施状況
(出所:稲垣忠氏の発表スライド)
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 (4)「教員研修の実施状況」については、アプリの研修やICT活用事例の交流などの項目は実施度が高いものの、情報活用能力に関する事例交流やカリキュラム、プログラミングなどの研修に関しては実施度が大きく下がった。特に中学校教員へのプログラミング研修は、ほとんど実施できていないのが実情だ。

教員研修の内容と取り組みの度合い
教員研修の内容と取り組みの度合い
(出所:稲垣忠氏の発表スライド)
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 (5)「学校としての取り組みの実施状況」では、情報活用能力についての動画を使った指導や、事後検討会で情報活用能力を話題にしているかなどの実施率は高かった。しかし一方で、子供たちが日常的に使える副教材や資料の配布、図書館との連携といった取り組みは、まだこれからということが分かった。

学校としての取り組みに関する回答
学校としての取り組みに関する回答
(出所:稲垣忠氏の発表スライド)
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 (6)「関連する学習活動の頻度」は、中学校で「学習課題の設定」という項目が小学校に比べて低かった。これは中学校と小学校の授業の進め方の違いに起因していると思われる。

 このほか自由記述のアンケート項目のまとめが紹介された。「課題と考えていること」として教員の研修不足を挙げる回答が突出したことが紹介された。

記述回答「重要なこと」と「課題と考えていること」の集計
記述回答「重要なこと」と「課題と考えていること」の集計
(出所:稲垣忠氏の発表スライド)
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 調査全体全体のまとめとして稲垣氏は、これから情報活用能力の育成に取り組む学校は「学校としての体系を見直す」「豊富にある教材を実際に使ってみる」「研究授業で話題にしてみる」の3つが大事だと語った。一方、すでにある程度取り組んでいる学校については、「カリキュラムマネジメントが機能するような評価の仕組みや研修」に取り組むのがよいとアドバイスした。