奈良県教育委員会 奈良県立教育研究所 主幹 小崎誠二氏(写真左)
県域の共同調達をして、同一ドメインで公用アカウントを導入した奈良県において、教育の情報化推進の中心的役割を果たす。「教育データの利活用に関する有識者会議」をはじめ、文部科学省の各種委員を歴任。

つくば市総合教育研究所 兼 教育指導課 情報担当指導主事 中村めぐみ氏(写真右)
茨城県つくば市において学校と家庭をつなぐ「シームレス学習」を推進。「教育データの利活用に関する有識者会議」を務める。

司会:江口 悦弘=日経パソコン編集長・教育とICT Online編集長
まとめ:小槌 健太郎

 GIGAスクール構想で児童・生徒1人1台のコンピューター端末が整備され、高等学校も含めて高速の校内LAN環境が整うなど、学校のICT環境は劇的に変わった。一方で、新型コロナウイルスの感染症対策で学校現場はオンライン授業への対応を迫られ、ICTの利活用や学校と家庭学習の連携など、新しい学びへの取り組みは待ったなしの状況だ。

 文部科学省の「教育データの利活用に関する有識者会議」の委員も務め、それぞれの自治体で先端的な取り組みを進める2人の教育関係者が、学校教育の現状と両自治体での取り組み状況などについてオンラインで実施した対談を前後編でお届けする。前編では、GIGAスクール構想でのコンピューター端末の調達についての苦労と重視した点などについて語り合った。

——まず、小崎先生にお聞きします。奈良県はGIGAスクール構想で小中学校に配備するデジタル端末を市町村ごとに調達するのではなく、県全体として約9万4000台の大規模調達を実施しました。そのあたりの経緯を教えてもらえますか。

小崎 奈良県では数年前から現在の「奈良県教育振興大綱」の見直しを始めていて、その中で児童・生徒1人1台のコンピューター整備を盛り込み、これまでのICT環境整備の後れを取り戻そうという議論をしていました。その最中に文部科学省がGIGAスクール構想を発表しましたが、当初、GIGAスクール構想は、端末などの調達は都道府県が取りまとめて実施することが前提だったので、奈良県としてはそのまま素直に市町村に対して「県域で調達しませんか」という提案をしたというのが経緯です。

奈良県御所市立大正小学校では、すでに1人1台端末を活用した授業が始まっている。奈良県は、県内の自治体に対して共同調達を提言。ほとんどの自治体がChromebookを選択した
奈良県御所市立大正小学校では、すでに1人1台端末を活用した授業が始まっている。奈良県は、県内の自治体に対して共同調達を提言。ほとんどの自治体がChromebookを選択した
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初めはChromebookの希望はゼロだった

小崎 3年前に学校の校務システムを県全体で共同調達したという実績もあって、市町村ごとに独自に調達するのではなく、県全体でまとめて整備することについて基本的に抵抗感はなかったように思います。また、奈良県では自治体の事務パソコンを購入するときに、複数の自治体が利用できる共同調達をしてきた実績もあり、GIGAスクール構想においても県域での調達がイメージしやすかった面があったかもしれません。

 実態を把握するためにまずアンケートを取りました。希望する端末について各自治体に聞いたところ、一部、アップルの「iPad」を導入済みの自治体が追加調達したいという要望はありましたが、ほとんどがWindowsパソコンという回答でした。その時点でChromebookの希望は1件もありませんでした。当然、それまでに学校でChromebookを使ったことがないので、未知のものだったからでしょう。

OSの勉強会で人だかり

小崎 そのまま調達に向かってもよかったのですが、せっかく文部科学省が3種類のOSを提示しているので、それぞれのメリット/デメリットを理解した上で調達に臨もうと、2020年に入ってから各自治体の教育委員会の整備担当者を対象に、教育研究所で端末の勉強会を開催しました。関係メーカーなどにお願いして端末の実機を持ち込んでもらってミニ展示会を開き、出席者にはその場で触って説明してもらって、使いやすさなどを確かめてもらいました。

 Chromebookに触れるのは、そのときが初めてという人がほとんどでした。Windowsパソコンにはこれまでも校務などで使っていてわざわざ確認したい人は少なかったようで、Chromebookを展示したグーグルのブースに大きな人だかりができていたのを覚えています。

 それから、3種類のOSの比較表を作り、それぞれのOSの良さを提示し、端末は共同調達するけれども、インストールするアプリなどは各自治体に任せるので、3種類のOSの端末の中からどれが何台ほしいかを自治体ごとに検討してもらいました。

奈良県の県域で同一ドメインとなる児童・生徒用アカウントを利用し、複数の学校で合同授業を実施した
奈良県の県域で同一ドメインとなる児童・生徒用アカウントを利用し、複数の学校で合同授業を実施した
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