教育に何が求められているかの議論を深めるべき

中村 確かにそうですね。免許証さえ持っていれば、どの車でも運転でき、車を走らせて目的地に到達するという本質的なところは変わらないですね。GIGAスクール構想では当初どのOSの端末を選ぶか議論されていましたが、私は国が教育に対して何を求めているのかという議論をもっと深めた方がいいんじゃないかと思っていました。

 つくば市は、まず教育の全体像を描いて、子供たちに何を学ばせるか、どんな学びの姿を実現するのかというところから始め、それを達成するためにはどういう環境を整備していけばいいかという手順を考えました。その流れの中でGIGAスクール構想が始まったという状況です。

 つくば市がWindowsパソコンを使う理由がもう一つあります。仕事ではWindowsパソコンを使う機会が多いため、教育の中でもWindowsを使った方がいいのではないかと考えました。つまり、キャリア教育の視点です。教育の中で、発達段階に応じた社会で必要なスキルを身に付けていくという視点を、段差なく自然にできます。奈良県は学校でChromebookを使ったその先という点については何か考えていますか?

端末の違いより安心・安全な使い方を教える方が大事

小崎 数年前までは、ほとんどの人がWindowsパソコンで仕事をしていました。でも最近は、仕事で打ち合わせに来る企業でもChromebookを使う人も増えてきて、皆さん仕事の大半は、Webブラウザーがあれば問題ないですよとおっしゃいました。なので、端末の調達でOSの選択にこだわるのはやめました。それよりも、安心や安全で自分のために自由に使えるすごさを子供たちにきちんと教えていった方がいい。

 今は1人1台のコンピューターを整備しようと言っていますが、最終的には1人マルチデバイスが理想。スマホもパソコンもタブレットも、使いたい教員や児童・生徒がどれでもそのときに一番便利な端末を選んで使えるようになればいいなと思ったんです。教員だってどの種類の端末を使っていても構わないので、自分の気に入った端末を使えばいい。利用するプラットフォームは、グーグルの「Workspace」(注:G Suiteから改称)にするか、マイクロソフトの「Microsoft 365」にするか、両方使うか、決める必要があるかもしれませんが、使う端末は何でもいい。ただ、「学ばせたいことが何か」をきちんと共有できていればいいんです。

国語の授業では、タブレット端末を使ってインタビューの様子を録画。写真はつくば市立前野小学校

Windowsの安心感を優先

中村 私が保守的なのかもしれませんが、どうしてもWindowsが社会一般で使われている状況や、セキュリティの堅牢(けんろう)さや端末管理、サポート体制といったことから、子供たちに与えることを考えると、Windowsの安心感の方が勝ったというのが、つくば市の状況でした。やはり、新しいことを進める上で、子供たちを支える保護者をはじめ、広く多くの方々に理解していただくためです。奈良県はその点どう判断されたのでしょうか。

小崎 奈良県は情報のセキュリティ面については、教員の慣れや実績を考え、個人情報を扱う校務系はWindowsで構築しているものを変える必要性は感じていません。授業などで使う学習系端末では、基本的に機微な個人情報は扱わないので、したいことが自由にできることを最優先に考えています。

 調達する端末を自治体が選ぶ際に、端末やクラウドサービスについて「〇〇社の製品は使えない」とか「〇〇社なんて信用できない」とか、ご自身の知っている範囲でものを語る方々が多かったのですが、整備担当者とそれぞれの企業がしっかり話す場を作ってもらって、今ではなく、これからがどうなるのか理解を深めてもらいました。また、当初グーグルのクラウドサービスは日本の教育関係機関で使うには利用規約などで不足を感じるところがあったのですが、規約が変わり不安がなくなりました。