子供たちに「あれもダメ、これもダメ」は意味がない

中村 つくば市の特徴なのかもしれませんが、教育系パソコンの利用法に関して、最終的な安心と安全はOSなどシステム側で担保するけれど、運用面ではある程度の自由度を高くし、子供たちの活動に制限をかけないやり方を重んじています。ほかの自治体ではセキュリティや個人情報保護を重視するあまり、あれも禁止、これも禁止、メールも使わせないという制限をかけているところがありますが、そこまで制限すると本来目指す次世代教育の意味を失ってしまうのではと感じてしまいます。

 そもそも国はこれからの教育の中で、さまざまな課題について児童・生徒が自分自身で考えて判断し、解決策を見つけていくことを求めています。システム側で必要なセキュリティを担保した上で、運用面の制限は少なくしていかないと意味がないと思います。

奈良市立都祁小学校ではICTを活用した授業が展開されている

小崎 ICTの専門家からは、教育クラウドのプラットフォームとしてはChrome OSでもWindows OSでも大きな差はないと聞いています。グーグルのデータの扱い方を不安視する声も多かったのですが、教育向けのWorkspaceでは、一般向けの無料サービスとは違って、グーグルがデータの内容をチェックできないですし、もちろん広告も表示されない、データの保全はしっかりやるという約束になっています。世界中の教育機関で使われていますし、有識者の意見や個人情報審査会で意見を聞いても、クラウドサービスに関してはグーグルでもマイクロソフトでも構わないだろうということでした。

中村 学習者が扱う情報を、どこまでセキュリティが堅固な場所で保存・管理しなければいけないか、ということかもしれないですね。子供たちが学習に必要な情報を集めたり、自分たちのデジタルノートに意見や考え方を書いたりという使い方であれば、学習用のデータ保存にそこまで高いセキュリティを求める必要はない。一方で児童・生徒の成績など個人情報を扱う校務系は、より高度なセキュリティを確保できるWindows系で管理するという考えは納得できます。

端末を使う目的意識を大切にしたい

中村 アプリケーションについては、どこまで子供たちに使わせるかなど機能制限のポリシーはありますか? つくば市では電子メールやチャットなどのツールを最初から児童・生徒に全てオープンに使わせて、学校外の人と自由につながれるということに教員や保護者が不安に感じることが多かったです。ある程度まで使える機能をコントロールできる点では、マイクロソフトの管理ツールの方が権限の付与に自由度が高いように感じています。

小崎 奈良県では、県立学校ではMicrosoft 365を使っていて、グーグルのプラットフォームと並列で利用していますが、管理コンソールなどを見ると、ほぼ同レベルのことができるようになってきたと感じます。

 グーグルの機能では「YouTube」と拡張機能は、なるべく多くのことができるように制限をかけていません。危険性やリスクなどを周知させた上で、何か問題があれば制限をかけるようにしています。メールなどのコミュニケーションツールは反対に、利用制限をかけた状態からリテラシーの向上に合わせて徐々に制限を緩めるようにしています。

中村 端末を導入した自治体からは、せっかく端末が届いたのに禁止事項が多く、機能が制限されていて使えないと聞くことがあります。つくば市はデジタル端末を学びのために使うという目的意識を大切にし、自分たちの道具は有効に活用し、使い方によっては危険もあるという情報リテラシーを子供たちに身に付けさせたいと考えています。

 その意味では、何でもかんでも禁止して使い勝手が悪くなっていくのは、国として教育のデジタル化を進める上でも本意ではないと思います。2021年4月以降、GIGAスクール構想で配備された端末を授業で使い始めるわけですが、こうした制限の多い端末で進む状況に、本来の目的がどうなるのか心配になります。