文部科学省は2021年3月22日、今後の学校教育の柱となる学習者用デジタル教科書(以下デジタル教科書)について検討を進める「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」の第9回会合を開催。中間まとめを公表した。

 教科書会社が発行するデジタル教科書は、2020年度時点で小学校用の約94%、中学校用の約25%が発行されていたが、2021年度には小中学校ともに約95%まで増える見込みだ。一方で普及状況については、2020年3月1日時点で公立学校全体の7.9%(公立小学校の7.7%、公立中学校の9.2%、公立高校の5.2%)が導入しているにすぎない。

 中間まとめでは、これからの学校教育を支える基盤的なツールとしてICTを最大限に活用し、児童・生徒の学習環境をより良いものに改善して学校教育の質を高めていくには、各学校でデジタル教科書の活用を一層推進する必要があるとしている。そのためには次の小学校用教科書の改訂時期である2024年度をデジタル教科書の本格導入の契機とすることを求めた。

 一方で現行の紙の教科書は、児童・生徒に必要な学校教育の基盤となってきたことと、一覧性に優れる特性や書籍に慣れ親しませる役割を果たしている。こうした点などを踏まえ、将来の教科書制度の在り方については、デジタル教科書と紙の教科書の関係や、検定などの制度面も含めて十分な検討が必要とした。

デジタル教科書の本格的な導入に向けて、さまざまな取り組みや検証・検討が必要としている
デジタル教科書の本格的な導入に向けて、さまざまな取り組みや検証・検討が必要としている
出所:文部科学省「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」中間まとめから作成
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 デジタル教科書の本格的な導入には、大きく分けて(1)全国規模での実証的な研究を通じたデジタル教科書の改善や効果的な活用の検討と、(2)今後の教科書制度の在り方についての検討が必要とした。

 (1)について現状では、公立学校でデジタル教科書の普及率が低く、活用の実践例が少ないことから、全国規模での実証研究を行い、検討することを求めた。

 具体的には、デジタル教科書に共通して求められる機能や、デジタル教材などとの連携についての検討が必要としている。デジタル教科書はそれぞれの教科書会社が制作を進めている。このため、最低限備えるべき機能や共通規格について、実証研究も踏まえ、ユニバーサルデザイン仕様の観点や技術の発展も考慮して検討し、教科書会社の制作を支援するガイドライン等を取りまとめることが望ましいとした。

 デジタル教科書と連携するデジタル教材については、今後さまざまな事業者の参画が見込まれるため、学習指導要領のコード付与による連携や、児童・生徒ごとの学習ツールの窓口となるシステム(学習eポータル)を含めたシステム間の共通規格の整備が必要だ。学習履歴などの教育データの利活用も含め、実証を進めながら総合的な検討を求めた。

 障害のある児童・生徒や外国籍の児童・生徒への対応として、アクセシビリティやユーザビリティの確保により学習上の困難を軽減できるとしている。こうした児童・生徒に向けた機能の一定の標準化が望ましいとする。

 2020年12月の検討会議において、デジタル教科書の使用を各教科の授業時数の2分の1に未満とする基準を見直した。これを受けて、デジタル教科書を含めたICT機器の使用が増えることによる児童・生徒の健康面への影響に関しては、引き続き最新の科学的知見などを踏まえた対策を講じる必要性に言及している。

 デジタル教科書のメリットを最大限発揮するには、教員のデジタル教科書を含むICT活用指導力の向上が必要不可欠だ。中間まとめでは、デジタル教科書の導入で個々の教員の指導力に大きな差が生じることのないよう、教育実習を含む大学の教職課程や、教育委員会や学校内の研修などを通じて、教員の指導力向上や底上げを求めている。