どのように教員の意識改革を進めるか

中村 2021年4月から、いよいよ公立小中学校で1人1台端末や教育データの利活用が始まりますが、どのように教員の意識改革を進めていけばよいのか考えています。新しい学びといっても、難しいことを求めているわけではありません。教員はとても真面目で、学習指導要領の内容を全て子供たちに教えなければならないという呪縛を考えます。

 教育データの利活用を考えると、教員の役割は子供たちをより正確に理解し、学びを導いていくことに変化していきますが、教員自身は責任感から、「教えなくてはならない」から抜け出せないのです。「子供に理解させなくてはいけない」「良い点数を取らせなければいけない」といった考え方にとらわれがちです。

 目前に迫った4月から始まる新しい学びで、教員が納得して新しい学びの意識を持ってもらえるような仕掛けがないか頭を悩ませています。何か良い知恵がないか、小崎さんにお聞きしたいと思っていました。

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小崎 実は、奈良県にはつくばには使えないちょっとした秘策があるんですよ。教員を東京に連れていって、世界のトップ企業などのオフィスで会議をしたり、社長や文部科学省の方とディスカッションをしたりするんですよ。こうした体験をすると、海外に行くことに近いインパクトがあり、教員の意識はびっくりするくらい変わります。

中村 私自身もいろいろな経験をしたり多くの人と話をしたりして、今の私がいます。確かに自分と同じ立場の教員がどのような教え方や働き方をしているのか、SNSなどでもいいので、同じ自治体以外の人と交流するのは重要ですね。

小崎 新型コロナウイルスの感染症対策で、教員の働き方やインターネットの使い方も変わってきて、コミュニティの在り方も変わりつつあります。安心で安全に使える教員向けのオンラインコミュニティを作って、いろいろなテーマを俎上(そじょう)に載せれば、教育委員会があれこれ言わなくても、教員同士で自由な議論が始まるのではないかと思います。

中村 同じ自治体の中で話すのではなく、例えばつくば市の教員と奈良県の教員が意見を交わすことで、化学反応が起きるような気がします。教員自身も子供たちと同じように気付いていかないと、これからの教育を推進していくことが難しくなります。私たち教育委員会側が教員向けプラットフォームを構築し、教員自身が化学反応を起こしていくような仕組みを考えていかなければいけないと思っています。

自治体・学校間の格差が生まれる可能性も

中村 先ほど奈良県では、教員を東京に連れていってカルチャーショックを与えたという話がありましたが、保護者も同じことがいえるかもしれません。あなたのお子さんがこれからのSociety 5.0というデジタル社会で生きていく中で、どのように成長して活躍していってほしいかを問いかけていくことが大切かもしれません。

 保護者は誰もが子供の幸せな将来を願っているので、より良く生きていくためのスキルは何なのかを保護者に投げかけています。2020年の一斉休校や緊急事態宣言下での学校休業のとき、保護者は学びが止まってしまうことの恐怖を感じていました。新常態(ニューノーマル)の新しい学びを理解してもらうことはできたようです。

 児童・生徒の学び方を変え、教員の学びに対する意識を変え、保護者の学校教育に対する考え方を変えていかなければいけませんね。

小崎 その通りですね。そうなってきたときに、端末の調達でOSはどれを選ぶか、といったことは本当に小さなことです。「どんな学びを進めていくのか」に論点をおくべきです。

子供たちはクラウドのコンテンツでプレゼンテーションを作成。写真は御所市立大正小学校
子供たちはクラウドのコンテンツでプレゼンテーションを作成。写真は御所市立大正小学校
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中村 どの端末がいいかという議論をされていたときは、学びの本質が見えていなかったのだと思います。4月以降は、端末を使って何を学んでいくべきかという本質的なことが見えていた自治体や学校と、そうではないところとの差が大きく開くのでないでしょうか。

 「学びのグランドデザイン」が描けている自治体・学校と、「端末が届いたから取りあえず使おうか」というところとでは、大きな格差が生まれるのではないかと懸念します。

小崎 きっと、何もせずに放っておいたら格差は生じますが、GIGAスクール構想は、うまくやれば教員の横並び意識の強さというのが良い方に働くのではないかと思っています。日本中、どの学校に通っても同じような質の教育を受けられるのは、日本の学校教育の大きな強みです。新しいことをしようとするときは、ものすごく抵抗してブレーキになることもありますが、前向きに進めば、もしかすると明治維新以来の大きな教育改革だって実現できるかもしれません。