新型コロナウイルス対策として全国で小中高等学校が休校となった事態を受け、経済産業省は無償で利用できる教育サービスや製品を紹介するWebサイト「学びを止めない未来の教室」を開設した。この取り組みについて、「未来の教室」プロジェクトを進める経済産業省経済産業省 商務・サービスグループ・サービス政策課 課⻑補佐 兼 教育産業室 室⻑補佐の柴田寛文氏に話を聞いた。

「学びのSTEAM化」が重要と話す経済産業省商務・サービスグループ・サービス政策課の柴田寛文氏

—新型コロナウイルス感染防止のための休校対策でまとめサイトを始めました。

 2020年2月27日に政府が新型ウイルス感染防止のために休校を要請しました。「未来の教室」が目指すのは、児童・生徒が場所や方法を問わず学びを実現することなので、本サイトの中でEdTech企業が提供するサービスを一覧で紹介しようと、2月28日には特設ページ『#学びを止めない未来の教室』を開設しました。50社以上の事業者が賛同してくれて短時間で公開できたのは良かったです。

—今後はこのサイトをどう運用していくのですか。

 休校対策で急いで立ち上げましたが、対応してくれるEdTech企業がこれだけ多くいることが分かりました。今回は、休校対策として時限的に無償でサービスを提供してくれるような企業を中心にリスト化しました。

 「未来の教室」サイトでもこうした企業をデータベースとしてまとめていますが、次のステップとして、学校や家庭で使う際の一定の基準をクリアしたサービスを紹介していくことなども考える必要があります。また、「未来の教室ビジョン」策定の際にも議論になりましたが、個別最適化された学びのために児童・生徒の学習のログをどう取り扱い、蓄積していくのかを考えることにもつながります。

新型コロナウイルス感染防止のための休校対策で急きょ始めたまとめサイト「#学びを止めない未来の教室」

科目を超えて「知る」と「創る」の循環を

 経済産業省は、2018年1月に立ち上げた有識者会議「未来の教室」とEdTech研究会(座長:津田塾大学教授 森田 朗氏)が行った教育現場での実証事業の成果を踏まえ、初等中等教育に絞って今後の政策課題を整理した「未来の教室ビジョン」を2019年6月に公表した。

 デジタル技術を教育に活用するEdTech(エドテック)で、創造性や課題解決力を育み、個別最適化した新しい教育をいかに作り上げるかを議論し、初等中等教育に関しては「学びのSTEAM化」「学びの自立化・個別最適化」「新しい学習基盤の整備」を柱にする。

—経済産業省が進める「未来の教室」の状況を教えてください。

 有識者会議の「未来の教室」とEdTech研究会での議論と、教育現場での実証事業の成果を踏まえ、初等中等教育に絞って今後の政策課題を整理した「未来の教室ビジョン」を2019年6月に公表しました。

 実証事業では、2019年度に「『知る』と『創る』の循環 」をテーマに5校のモデル校で実施しました。そこで分かったのは、「知る」と「創る」を循環させようとしても限界があるということです。例えば、SDGs(持続可能な開発目標)を理解したり、地域のいろいろな職業について学んだりする際、数学と英語のように科目を超えて学ぶことはできますが、生徒たちの自由な発想を尊重していくと、理科や社会かに興味が広がることもあります。その意味では、学校全体で「知る」と「創る」を循環していかないと、生徒たちの思考の自由が制限されてしまいます。

 この実証事業で実現できたことと残された課題を基に、2020年度はカリキュラム全体を「学びのSTEAM化」 という、文理を問わず教科知識や専門知識を習得すること 、つまり「知る」と、探究・フロシェクト型学習の中で知識を横串に刺し、創造的・論理的に思考して未知の課題や解決策を見出す「創る」を循環するような学びを実現させることをテーマに続けていたいと考えています。

「未来の教室」の実証プロジェクトの進捗状況や、学校・学習塾・個人学習で使える国内・世界のEdTechの最新動向を情報発信する「未来の教室 〜learning innovation〜」

—実証事業の成果は何らかの形で発表するのですか。

 そのつもりです。今は新型コロナウイルスの感染防止のため、大人数を集めるイベントなどは控えていますが、オンラインでのイベント実施など、何らかの形で公表していきたいと考えています。

学びのSTEAM化に取り組む

—2020年度はどのように取り組んでいきますか。

 EdTechを使うことが目的ではなく、「学びのSTEAM化」の考え方をより具体化していきたいと思っています。EdTechは新型コロナウイルスの影響もあり、ニーズが高まっていると感じています。いよいよ普及の段階と考えており、2019年度の補正予算では、EdTech導入実証事業に10億円の予算を計上しました。