国立情報学研究所(NII)がメタバースを活用したシンポジウムに挑戦している。NIIの「大学の情報環境のあり方検討会」が主催する「教育機関DXシンポ」は、通常「Webex」を使ったオンライン配信だが、2022年1月から3月にかけて4回にわたり、仮想空間内のメタバースで講演や議論が展開された。メタバースの構築と提供には、オープンソースのVRプラットフォーム「Hubs」(Mozilla)とメタバースプラットフォームの「cluster」(クラスター)を使用している。

2回目は東北大学で、総長の大野英男氏がVRゴーグルを装着して登場するという驚きの展開。総長室からアバターでメタバースに入って講演した。右が大野氏で、左はNII 所長の喜連川優氏。2人は仙台と東京から参加した
2回目は東北大学で、総長の大野英男氏がVRゴーグルを装着して登場するという驚きの展開。総長室からアバターでメタバースに入って講演した。右が大野氏で、左はNII 所長の喜連川優氏。2人は仙台と東京から参加した
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 1回目と2回目の開催時は、音声が途切れたり、聴講者が多くなると動作が重くなったりと、初めての挑戦だけにトラブルが起こった。だが、それを踏まえてサーバーを強化し、VR空間を複数に分けるなどの対策を取り、次第に安定するようになった。

2022年1月14日に初めてメタバースで開催された「教育機関DX シンポ」。メタバース内で登壇者のアバターが講演をしたり、ほかの登壇者たちと議論したりした。仮想空間内のスクリーンに投映されるため、発表スライドの表示が小さ過ぎた
2022年1月14日に初めてメタバースで開催された「教育機関DX シンポ」。メタバース内で登壇者のアバターが講演をしたり、ほかの登壇者たちと議論したりした。仮想空間内のスクリーンに投映されるため、発表スライドの表示が小さ過ぎた
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 聴講者は自分のアバターを選んでVR空間を動き回りながら講演を聴講できるので、現実のシンポジウム会場に来ているかのような臨場感がある。周辺にいるほかの聴講者とボイスチャットも可能だ。VRゴーグル(HMD)があれば、よりリアルな没入感を得られるだろう。

メタバース内ということで、アバターを使って研究発表をする人もいる。東北大学 准教授の林雅子氏は、コロナ禍で来日できない留学生と国内学生がVRやメタバースを駆使して協働学修、交流する事例を発表した
メタバース内ということで、アバターを使って研究発表をする人もいる。東北大学 准教授の林雅子氏は、コロナ禍で来日できない留学生と国内学生がVRやメタバースを駆使して協働学修、交流する事例を発表した
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 運営者も聴講者も、メタバースやVRに不慣れなこともあり、まだその良さを生かせているとは言えない。とはいえ、「VR会場内に聴講者向けのサロンを作ったらどうか」とか、「発表が終わったら講演者は会場に出てきてチャットができたらよいのに」などのアイデアが浮かんできて、今後の大きな可能性を感じさせる。こうしたワクワク感は、同シンポジウムを継続させる新たな力になりそうだ。

4回目のメタバース開催は、大阪大学のサイバーメディアセンターが運営を担当。大阪大学総長の西尾章治郎氏が講演した。ここはメイン会場で、聴講者が集まっている。周囲の壁にはプレゼン資料が貼り出されている
4回目のメタバース開催は、大阪大学のサイバーメディアセンターが運営を担当。大阪大学総長の西尾章治郎氏が講演した。ここはメイン会場で、聴講者が集まっている。周囲の壁にはプレゼン資料が貼り出されている
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