国立情報学研究所(NII)がメタバースを活用したシンポジウムに挑戦している。NIIの「大学の情報環境のあり方検討会」が主催する「教育機関DXシンポ」は、通常「Webex」を使ったオンライン配信だが、2022年1月から3月にかけて4回にわたり、仮想空間内のメタバースで講演や議論が展開された。メタバースの構築と提供には、オープンソースのVRプラットフォーム「Hubs」(Mozilla)とメタバースプラットフォームの「cluster」(クラスター)を使用している。
1回目と2回目の開催時は、音声が途切れたり、聴講者が多くなると動作が重くなったりと、初めての挑戦だけにトラブルが起こった。だが、それを踏まえてサーバーを強化し、VR空間を複数に分けるなどの対策を取り、次第に安定するようになった。
聴講者は自分のアバターを選んでVR空間を動き回りながら講演を聴講できるので、現実のシンポジウム会場に来ているかのような臨場感がある。周辺にいるほかの聴講者とボイスチャットも可能だ。VRゴーグル(HMD)があれば、よりリアルな没入感を得られるだろう。
運営者も聴講者も、メタバースやVRに不慣れなこともあり、まだその良さを生かせているとは言えない。とはいえ、「VR会場内に聴講者向けのサロンを作ったらどうか」とか、「発表が終わったら講演者は会場に出てきてチャットができたらよいのに」などのアイデアが浮かんできて、今後の大きな可能性を感じさせる。こうしたワクワク感は、同シンポジウムを継続させる新たな力になりそうだ。