iPadで算数的な考え方を発展させ、深い学びにつなげる

 iPadにはカメラで捉えた対象の長さを測定する「計測」アプリが搭載されている。このアプリで測った長さが本当に正確かどうかを、ものさしや巻き尺で実測し割合を求めて調べるといったやり方で、小学校高学年の算数の授業にiPadを導入しているのが近畿大学附属小学校の外山宏行教諭だ。

 「子供たちは、テレビで言っていたから、ネットに載っていたからなどと無条件に情報を信用してしまうところがあります。そこに一石を投じる意味でも、アプリケーションで得られる数値が本当に正しいかどうかを実測して、その有用性を実感することには大きな意味があると考えました」と外山教諭。

iPadに標準搭載されている「計測」アプリで測定した長さが本当に正確かどうかを実測し、比較している児童
(出所:近畿大学附属小学校 外山 宏行教諭)

 近畿大学附属小学校では、2014年からiPadが教員に1人1台配備され、2016年からは授業で児童が使える共有iPadが導入された。しかし、当初はカメラ機能を使ったりWebサイトを見たりするぐらいにしか使わず、授業での活用方法に悩んだそうだ。

 あるとき、試しに授業で使う動画をiPadで作ってみたところ、スムーズに制作できたことで、iPadのクリエーティブ性能の高さを実感。これを授業に活用しようと思いついたという。

小学校高学年の算数への実践例を執筆した近畿大学附属小学校の外山宏行教諭
(出所:近畿大学附属小学校 外山 宏行教諭)

 しかし、実際に児童1人に1台のiPadを導入することが決まった際に、保護者からは「機械に向かって延々とドリルのような教材を解いていくことになるのでは」といった懸念の声が出たそうだ。

 そこで、近畿大学附属小学校ではICT機器を「コミュニケーション&クリエーションのためのツール」と定めて、主体的・対話的で深い学びの実現に向けるというコンセプトでスタート。もちろん、ドリル的な使い方が向いている内容ではそのような使い方もしている。

 外山教諭はiPadを児童のアイデアや意見の表現に活用し、コミュニケーションを広げるための研究を続けている。「iPadはさまざまなことができるからこそ、子供たちにどんな力を付けさせたいかを意識できる」という外山教諭の言葉は印象的だ。

変化を楽しみ、子供たちと一緒に学ぶ

 今回取材した3人の教員から、iPadを導入した授業で児童たちの学習意欲が高まり、学びが受動的なものから能動的なものに転換される様子を聞くことができた。何よりも教員自身が変化を楽しんでいるように見受けられた。この「あらゆる学びを創造的にデザインする」を読むと、ほかの執筆者からも同じような印象を受ける。

 実は、本書はiPadやMacなどのアップル製端末に搭載されている文書作成アプリ「Pages」を教員たちが使って執筆、Pagesの機能で電子書籍の形式である「EPUB」に出力して制作した。つまり、教員たちもまた児童・生徒と同様にICT機器を活用して成果を発表しているのである。

 本書は学校の教員をターゲットに執筆されたものではあるが、家庭でiPadを活用して子供の創造力を高めたいと考える保護者にも有用だ。一読をお勧めしたい。