国は「教育データ利活用ロードマップ」を公表し、データ活用の重要性を訴えた。デジタル庁や文部科学省など4省庁が取り組む教育DXの推進に向け、その中心になるデジタル庁が果たす役割を聞いた。

写真: 稲垣 純也
写真: 稲垣 純也
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──国が「教育データ利活用ロードマップ」を公表しました。

 ロードマップはデジタル庁、総務省、文部科学省、経済産業省の4省庁で取りまとめました。教育データの利活用について、将来的に何を進めていくべきか、その方向性を明確にしています。

 第1段階は、紙のプロセスをデジタルに変えていく「デジタイゼーション」、第2段階はデータを利活用して学習者主体の教育を実現していく「デジタライゼーション」、そして第3段階が「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。

 今回のロードマップでは、教育データの標準化やデータ連携を通じて利活用を促すという第2段階のデジタライゼーションを主眼に置いています。デジタル庁は全体構想で役割を担うとともに、各省庁の具体的な取り組みをデジタルの面から支援していくことになります。

──学びのデジタル化には個人情報が絡むため、収集、利用目的、提供先などの許諾が必要です。

 教育分野は学習者が児童・生徒であるケースがほとんどなので、利活用において、本人が不利益を被らないことが重要です。第三者へのデータ提供では、当然、個人情報の取り扱いに関する同意が必要になります。自身で判断能力を有している年代か否かで、保護者にも同意を得ることが想定されます。いずれにしても、データ利用の目的を分かりやすく説明し、児童・生徒や保護者の方々の理解を得ることが欠かせません。

 また、本人が外部に表出することを望まない内面の部分をデータの利活用によって可視化することは想定していない、という点は繰り返し説明する必要があると考えています。

変化を求められる教員の役割

──教育DXが進む中で、教員の役割も変わってきますね。

 教育DX後の世の中においても、学校の役割は不変です。ただ、「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」では、「学校でしか学べない学びとは何か」という視点が必要です。

 教員に求められる役割も必然的に変わってくるでしょう。生徒の学びのデザインを支援することや、学び方をコーディネートするなど、生徒をそれぞれのゴールに導く“学びの伴走者”としての役割が求められるようになるのではないでしょうか。

──教育DXに向け、デジタル庁はどのような役割を果たしますか。

 デジタル庁が発足したことにより、さまざまなデジタル化について各省庁の当事者意識が低下しているとすれば大きな問題です。教育DXの全体的な構想はデジタル庁が中心となって進めるものの、具体的な政策実施における各省庁の役割は、これまで同様大きなものです。

 現場を持つ各省庁が当事者意識を持ち、デジタル庁が効果的に後押しすることで、日本の教育DXにとどまらず、社会のデジタル化が加速すると考えています。

*2022年4月1日から埼玉県戸田市教育委員会事務局次長(兼)教育政策室長

初出:2022年4月18日発行「日経パソコン 教育とICT No.20」

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教育にもデジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せている。国は教育データの利活用を軸にした「データ駆動型教育」への転換に向けた基盤整備を急いでいる。教員の熱意と経験に支えられてきた教育が、DXによって大きく変わろうとしている。本書では、本インタビューのフルバージョンをはじめ、国が推進する教育データ基盤整備の全体像の解説、ICTを活用した先進的な授業の事例などを収録した。