グーグルのGoogle for Education マーケティング統括部長 アジア太平洋地域のスチュアート・ミラー氏は2022年5月11日、EDIX東京 教育総合展において講演し、小中高等学校でのコンピューター導入に関する最新状況と将来展望を語った。

1人1台の環境で学校の授業が変わる

 まず、学校の新しい日常として、3つの事例が紹介された。1つめは神奈川県川崎市のGIGAスクール構想への取り組みだ。教員のインタビュー映像も登場し、川崎市は教育プランとして「共生・協働」「自主・自立」という基本目標を掲げており、「Google for Education」の共有の仕組みとマッチしていると導入の効果を語った。

 続いて宮城県仙台第三高等学校における、1人1台端末の活用による、授業スタイルや生徒の取り組みの変化が紹介された。歴史授業では生徒たちが共同でプレゼンテーションをまとめるといった、主体的な学びを進める様子が紹介された。この授業の様子を見学した宮城教育大学の安藤明伸教授は「生徒が先生の意図を理解し、思考の整理をするのにICTを活用している。インプットを理解、整理してアウトプットをすることで、同じ日本史を覚えるのでも納得して知識が定着していくという違いが生じる」と端末導入の効果を語った。

 3つめの岡山県立林野高校の事例では「Chromebook」を活用する生徒2人の一日の様子が紹介された。同校はGIGAスクール構想の前から1人1台の端末を採り入れた学習を実践しており、端末活用の近い将来像が見える状況にある。登場した生徒は「コメントをもらえて学習が進めやすい」「課題が一覧できるので効率が上がる」「クラスメートの回答も見られて参考になる」などと感想を語った。

Chromebookを活用する岡山県立林野高校の事例
Chromebookを活用する岡山県立林野高校の事例
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GIGAスクール構想の成果に世界が注目

 第2のテーマとして、GIGAスクール構想に対する世界の反応が紹介された。まず、2021年11月に米国で開催された「Google I/O 2021」の基調講演の映像を流し、CEOのスンダー・ピチャイ氏が教育市場向けのChromebookの普及について日本を例に挙げて説明したことを紹介。また、日本のGIGAスクール構想に刺激を受けたマレーシア、シンガポール、インドネシア、台湾、韓国では、生徒に向けた端末の普及計画を進めているという状況についても解説した。

日本の教育現場へのChromebookの普及度について語る米グーグルのスンダー・ピチャイ氏(出所:米グーグルがYouTubeで公開している Google I/O 2021の基調講演映像)
日本の教育現場へのChromebookの普及度について語る米グーグルのスンダー・ピチャイ氏(出所:米グーグルがYouTubeで公開している Google I/O 2021の基調講演映像)
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 ミラー氏は「どこからでも学べ、どこからでも教えられるようになったことで、学校は資格を取る場所から、楽しみながら自分の可能性を広げる場所へと変わりつつある」とアジアの教育現場の認識の変化を説明する。「日本から始まった大きな変革が起きている」(同氏)という。

1人1台の次のステップはどうなるのか

 3番目のテーマは、日本の教育環境は今後どうなるのかという問いかけだ。まず東北大学大学院情報科学研究科 教授の堀田龍也氏がインタビュー動画で登場。現状は基本的な操作ができる、教えられながらできる、という状態だが「今後は身に付けたICTスキルを使って、次はこれをやりたい、このやり方でやってみたいなどと子供が自分で決めていく段階に入っていく」と語った。

1人1台環境の将来展開を語る東北大学大学院の堀田龍也教授
1人1台環境の将来展開を語る東北大学大学院の堀田龍也教授
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 続いて、こうした次のフェーズに入りつつある事例が2つ紹介された。熊本県高森町立中央小学校の事例では、児童が与えられたテーマについてクラウドを通じてグループの仲間と共同でスライド資料を作成する様子が紹介された。帰宅後の家庭学習の時間に子供同士で協働しながら、自主的に課題に取り組んでいる。教員側もクラウドで各児童の学習状況を授業の前に把握できる。同校教諭の小林翼氏は「限られた授業時間の中で意図した方向に導きやすくなった」と語った。

 もう一つの事例は、愛知県春日井市の高森台中学校での生徒個別に最適化された授業だ。図形の問題を複数用意し、それぞれの問題の解き方の解説動画を用意したところ「生徒が問題と動画を選び、自主的に問題を解く授業スタイルが生まれた」(同校教諭の長縄正芳氏)という。

 このほか、県ぐるみの取り組みとして、可視化され、個別最適化された教育システムの先進例である高知県が取り上げられた。同県では小中高校でChromebookによる1人1台の端末と「Google Workspace for Education」を導入している。Workspaceは分析機能を強化した「Plus」という有料版にアップグレードしており、「小中高と同じシステムを使うことで子供が学んだ記録を途切れなく残せる」(高知県 教育委員会事務局 教育次長の菅谷匠氏)という。高知県知事の濵田省司氏は「可能性や潜在能力を最大限に引き出して、自分の夢を実現していく教育を高知で行い、次の時代の坂本龍馬がどんどん出てくることに期待している」と語った。

高知県の取り組みについて語る濵田省司知事
高知県の取り組みについて語る濵田省司知事
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