政府の教育再生実行会議は、2021年5月中にも12回目の提言「ポストコロナ期の新たな学びの在り方について(第十二次提言)」を出す。内容はまだ明らかになっていないが、この中で「教育におけるデジタル化の推進とデータ駆動型への転換」が提言されるとみられる。デジタル化は昨今ビジネスでも教育分野でも盛んに叫ばれているが、「データ駆動型」という言葉は耳慣れない。だが、同会議の「ワーキング・グループ有識者」の一人である東北大学大学院・東京学芸大学大学院 教授の堀田龍也氏は、「令和3(2021)年度はデータ駆動型教育に向かう年になる」と予測する。では、データ駆動型の教育とは、いったい何だろうか。

東北大学大学院情報科学研究科 教授・東京学芸大学大学院教育学研究科 教授の堀田龍也氏。文部科学省の「教育データの利活用に関する有識者会議」で座長を務める
(撮影:渡辺慎一郎)

 GIGAスクール構想によって実現した児童・生徒1人1台のコンピューターによって、個人の学習履歴や成績などの情報を収集・分析できるようになると期待されている。大学でも、コロナ禍により授業がオンライン化されてLMS(学習管理システム)の利用率が高まったことで履歴がたまり、学生の学修活動を分析できるようになりつつある。学習者の属性、学習履歴、成績といった教育データを活用することで、学習者一人ひとりに最適な学習環境を提供したり、ビッグデータ解析によって授業や教育行政を改善したりできると言われる。こうした客観的なデータ基づいて日々の授業を改善し、教育行政の方向性を見いだしていくのがデータ駆動型の教育だ。

教育データを活用することで、教員はより良い授業ができるようになり、行政はエビデンスに基づいた施策の立案が可能になる
(出所:日本学術会議「教育のデジタル化を踏まえた学習データの利活用に関する提言」)

 データ駆動型教育の具体例として、堀田氏は2つの例を挙げる。一つは「例えば、世帯収入や地域の高齢化率と学力の関係といった、さまざまなデータを組み合わせて分析すれば、何か分かることがあるかもしれない。そうしたエビデンスを踏まえ、児童・生徒の努力とは関係なく恵まれない状況にある子供たちを支援する予算を付けるような施策に役立つ」(堀田氏)という。もう一つは、「学習履歴などのデータを基に、その児童・生徒に最適な学習方法や指導方法を見つけることができる」(堀田氏)ことだ。

国立情報学研究所長・東京大学教授の喜連川 優氏。新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年3月以来、国立情報学研究所が主催する「教育機関DXシンポ」でオンライン授業などのノウハウ共有に大きな役割を果たした
(撮影:丸毛 透)

 2020年11月に開かれた教育再生実行会議のデジタル化タスクフォース(以下、TF)において、国立情報学研究所 所長の喜連川 優氏は「医療がデータを基に薬の処方や手術などをしているように、デジタルを活用し、教育でもエビデンスに基づく教育、データ駆動型教育を目指す時代となる」と指摘している。喜連川氏はデータベース分野における著名な研究者であり、情報処理学会の会長を務めたこともある。「日経パソコン 教育とICT」のインタビューでも、データ駆動型教育への転換を訴えている。教育再生実行会議の第12次提言は、こうした意見が反映されたようだ。

教育再生実行会議のTFで議論された教育のデジタル化
(出所:教育再生実行会議デジタル化タスクフォース 主な議題の整理(案))