発売中の日経ソフトウエア2021年7月号では、この「micro:bit v2」を使い、子供たちが楽しめるプログラミングの作例を掲載しています。ここではその記事を、特別に公開します。
「micro:bit」(マイクロビット)は、イギリスのBBC(英国放送協会)が主体となって開発した教育向けシングルボードコンピュータで、イギリスでは11~12歳の子供全員に配布されています。初代micro:bitは2015年8月に誕生して、2017年8月から日本国内での販売が開始されました。
micro:bitは、50mm×40mmで手のひらにのせられるサイズのシングルボードコンピュータですが、5×5のLEDマトリクスや地磁気センサー、加速度センサー、温度センサー、2つのボタン、BLE(Bluetooth Low Energy)などを搭載し、パソコンやタブレット/スマートフォンを使って簡単にプログラミングができます。モータードライバーなど、micro:bit用拡張基板もサードパーティから多数発売されています。価格は約2200円(税込)と手頃で、小中学校などでのSTEM教材として人気があります。
マイクとスピーカーを新たに搭載
現在、micro:bitの開発は、新たに設立されたMicro:bit教育財団に引き継がれています。Micro:bit教育財団は、2020年10月にmicro:bitの新バージョン「micro:bit v2」を発表しました。
micro:bit v2は、外観は従来のmicro:bitとほとんど変わりませんが、新たにマイクとスピーカーが標準搭載されたほか、ロゴマークにタッチ検出機能が追加されたり、電源状態を示すLEDが追加されたりするなど、教育向けシングルボードコンピュータとしてより進化しています(図1、図2)。
プロセッサーの性能も上がり、メモリー容量も、フラッシュメモリーが2倍に、RAMが8倍に増加しています。そのほか、Bluetoothのバージョンを4.0から5.0にしたり、外部モジュールに供給可能な電流を90mAから190mAに増やしたりなど、細かな点も強化されています。また、エッジコネクターに凹みができ、ワニ口クリップなどを挟みやすくなっています。micro:bit v2では、従来のmicro:bit用プログラムをそのまま動かすことができます。
なお、micro:bitを動作させるための単4形乾電池ボックスと、micro:bitをパソコンと接続するためのUSBケーブルが付属する「micro:bit go v2スターターキット」と呼ばれるパッケージもあります(税込約2400円)。初めてmicro:bitを購入するならば、こちらのパッケージもよいでしょう(図3)。
なお、前バージョンであるmicro:bitの販売は終了し、順次、micro:bit v2のみの販売に切り替わっています(表1)。
本稿では、micro:bit v2での新機能や強化点を解説し、その新機能を生かした作品をプログラミングで作ります。
3種類の方法でプログラミングが可能
micro:bit v2をプログラミングするには、大きく分けて3種類の方法があります。
1つめは、Microsoftのプログラミング学習プラットフォーム「MakeCode」によるmicro:bit専用エディタを使う方法です。パソコンのWebブラウザからサイト(https://makecode.microbit.org/)にアクセスして利用します。micro:bit実機がなくても、画面上に表示されるシミュレーターでプログラムの動作を確認できるので、小中学校などでのプログラミング学習にも最適です(図4)。MakeCodeでは、ブロックを並べるビジュアルプログラミング方式とJavaScriptによるテキストコーディングのプログラミングが可能です。初めてmicro:bit v2を使う方は、まずはMakeCodeを使うことをお勧めします(図5)。

2つめは、本格的なプログラミング言語であり、AI開発などでも広く使われているPythonを使う方法です。こちらも、専用サイト(https://python.microbit.org/v/2)でプログラミングができます(図6)。
3つめは、Scratch(https://scratch.mit.edu/)の拡張機能を使う方法です。ScratchはMIT(マサチューセッツ工科大学)が子供向けに開発したビジュアルプログラミング環境で、世界中で広く利用されています。標準ではmicro:bit v2には対応していませんが、Scratchとmicro:bit v2を連携させるための「Scratch Link」と「micro:bit拡張機能」を利用することで、micro:bit v2の搭載センサーを使って、パソコンの画面上のキャラクターを動かすことなどが可能になります(図7)。
micro:bit v2単体で動作するプログラムを作成するなら、1つめのMakeCodeを使うのがよいでしょう。本稿では、MakeCodeを使ったプログラミングを解説していきます。
それでは、micro:bit v2の新機能を生かした作例をいくつか紹介していきましょう。