新型コロナウイルスによる感染症対策により、ほとんどの大学や高等専門学校が授業の開始時期を遅らせ、従来の対面型授業を避けて遠隔授業を実施している。こうした状況を受けて文部科学省は2020年5月22日、大学などから寄せられる問い合わせに対して指針を示すとともに、遠隔授業の参考事例として大学8校と高等専門学校1校の取り組みを紹介した。

 文部科学省では新型コロナウイルスによる感染症の拡大が懸念されていた2020年3月24日に、感染拡大防止のため授業日程や留意すべき事項について大学や高等専門学校に向けて通知して対応を促し、4月21日には対応方法についてのQ&Aも示していた。今回の通知では、各大学などの参考になるようQ&Aを更新し、授業コマ数の設定や実際に遠隔授業を実施するに当たって注意すべき点などを提示した。

 例えば3月24日の通知では、対面授業から遠隔授業に切り替えた際の単位の取り扱いや、具体的な遠隔授業の実施方法について「新型コロ対策に限定されるのか」という問いに対しては、「遠隔授業に係る解釈は、当該遠隔授業に係る取扱いを明確化したものであり、新型コロナウイルス感染症対策に係るものに限ったものではありません」とし、感染症対策以外での遠隔授業の対応も明確に示した。

 学生が教科書や教材を自宅で自習した上で、メールや掲示板などを使って質疑応答をすることが遠隔授業として認められるのかという問いに対しては、遠隔授業は「授業外の予習・復習に相当するような単に教科書を読ませるといった形態は想定しておらず」、また「単に印刷教材等の送付により授業が完結することは想定しておらず」、教員が授業の目的や狙い、必要な視点や考え方など授業中に課すものに相当する学習が必要で、毎回の授業の実施に併せて質疑応答などによる指導を求めるなど、遠隔授業の考え方について注意を促した。

 教員が自宅から遠隔授業を実施することに関しては、法令上「規定による遠隔授業に係る送信側の場所について限定はない」として、対面型の授業と同等の教育効果が認められる場合には、自宅からでも問題ないとした。その上で、教員個人に過度の負担を強いることのないように、機器の貸し出しや大学側の支援を促した。

 必要に応じて事前にアンケート調査を実施し、遠隔授業を受ける学生の通信機器の保有状況を把握して、適切な実施方法を検討するよう求めている。遠隔授業の実施に当たっては、通信回線への負荷に配慮した授業を検討し、画質を調整することで教材などのデータ量を減らしたり、回線の空いている時間帯に教材をダウンロードする工夫をしたりして、データ通信量を減らす「データダイエット」への協力も求めている。

遠隔授業に関しては、多くの大学が試行錯誤を続けている。紹介された大学・高等専門学校は、それぞれのやり方で遠隔授業に取り組んでいる
出所:文部科学省「学事日程等の取扱い及び遠隔授業の活用に係るQ&A等の送付について」

 このように依然として多くの大学や高等専門学校で試行錯誤が続いている状況を受けて、参考になる事例を紹介した。

 例えば、遠隔授業にいち早く取り組んだ東京大学は、遠隔授業に関するポータルサイトを3月11日に開設、学生への支援や説明会の案内、トラブルなどの問い合わせやQ&Aなどの情報を発信した。また、学生への履修・受講の案内、端末やルーターの貸し出しなどで支援した。教職員は週1、2回オンラインで情報交換会を実施し、学生の受講状況を確認している。学生の受講環境に配慮してデータ通信量を削減するため、動画の使用は最小限にとどめ、スライドやPDFのダウンロードなどと音声を組み合わせた講義でデータダイエットを徹底した。こうした取り組みを受けて、学生向けのアンケート調査ではおよそ75%が「満足」または「ある程度満足」と回答したという。

 東北大学では、教職員と学生が一体となって遠隔授業タスクフォースを結成し、2500人の「学生ピアサポーター」が新入生をサポートするなど準備をした。4月20日からは試行期間として検証を行い、5月7日から正式に授業を開始した。試行当初の4月20日にはアクセスが集中して通信障害が起きたが、システムを増強して対応。正式授業開始に際しては約4000科目の授業を配信中という。

 早稲田大学では人数の規模別に遠隔授業を規定し、10人以下の小規模ゼミや演習では、事前にビデオやテキストで課題を提示した上で、同時双方向の画面共有・発表・質疑応答などで授業を行っている。30人程度の中規模の実習では、実技やデモのビデオを提供した上で、動画によるテストや実技レポートを実施する。50人を超える大規模な講義ではオンデマンド型のレクチャービデオを配信し、クイズやレポートなどで対応している。データダイエットの観点から、リアルタイムでのビデオ会議は必要最小限にしていることが特徴だ。